金石文の中の倭人 ~ 河姆渡(かぼと)遺跡と倭人の関係とは? 

張莉氏の論文の続きです。

[論文]
安徽(あんき)省北西部の亳県(はくけん)の元宝抗村一号墓から発見された磚(せん)
倭人、時を以って盟すること有りや否や」(170年頃のものと推定される)
とある。 磚文の「盟」とは古代中国の近接する国々の間で神明にかけて交わされる不可侵や同盟の近いを意味するのであり、そこからするとこの「倭人」が遠く離れた倭人とは考えにくく、安徽省亳県に定住していた倭人と考えるのが妥当である。この金石文は倭人が中国国内に定住していた動かぬ証拠である。

[解説]
磚(せん)とは、
「東洋建築に用いられたレンガ。正方形や長方形の厚い板で、中国周代に始まり、漢代に発展、城壁・墓室などに用いられた。」(デジタル大辞泉)

また金石文とは、
「金属や石に刻まれた文字や文章。刀剣・甲冑・土器などに刻んだものを含まれることもある。」(デジタル大辞泉)
です。

金石文は、極めて資料価値の高いものです。なぜなら、三国志などの紙の書物は、書かれた当時の書物が残っているわけではなく、時代を経て人々の手によって書写されたものしか我々は見ることができないからです。だから、誤写などの可能性が出てきて、様々な解釈がされてしまうわけです。

その点、金石文は当時の文字がそのまま残っているわけですから、研究していく上でとてもありがたいわけです。

さらに論文を読んでいきます。

[論文]
越人は単一の民族ではなく、百越と呼ばれていた。この越族の中に倭人が含まれていた。長江下流域に住んでいた倭人の一部が北上し、山東半島から朝鮮を経て、日本に渡ったのであろう。・・(中略)・・その(倭人の)出自は概ね長江流域の中下流域の南側で、その文化を伝える最大の遺跡は現在の浙江省余姚市にある河姆渡(かぼと)遺跡で7000年~5000年前の遺跡であり、稲と高床式建物がすでに出土している。 

[解説]
倭人出自の遺跡として河姆渡(かぼと)遺跡を挙げています。時代としては、日本で言えば縄文時代で、青森県の三内丸山遺跡(5500~4000年前)の少し前に当たります。
河姆渡遺跡は、発見されたのが1973年と新しいのですが、人工的かつ大規模に稲の栽培が行われていた世界最古の稲栽培の遺跡として有名です。その他、ひょうたん、なつめ、ハス、ドングリ、豆などの植物をはじめ、ブタ、イヌ、水牛などの家畜も確認されています。

中国国内最古の漆器や陶器も発見されました。高床式住居が数多く発見されましたが、当時は気候温暖期であり、頻繁な雨など高温多湿の気候に対するものであったと考えられています。

河姆渡遺跡から出土した黒陶
 河姆渡遺跡黒陶 (506x640)

地名がいろいろ出てきたので、前回の図に書き加えます。

周時代の越族領域2 
だいぶすっきりしてきました。

確かにこの地図を眺めていると、記録に書かれていることが、海を渡った日本に関することであったとは想像しにくいですよね。

また、越人について百越と呼ばれ、長江下流域に住んでいたとありますが、もう一つ、興味深い話があります。

は、粤(えつ)とも書く。漢書地理誌に「その王は皆夏王朝の始祖禹(う) の子孫であり、又その子孫、帝小康の諸子の後胤」と書かれている。その分派が多いので、百粤(ひゃくえつ)とも言われた。」(wikipediaより)

夏王朝とは、周王朝のさらに二つ前の王朝で、紀元前2000年頃~紀元前1600年頃に現在の河南省付近にあったとされる中国最古の伝説の王朝です。「史記」には、471年続き、殷(いん)に滅ぼされた、とされています。
従来、伝説とされてきましたが、近年、遺跡の発掘などにより、実在の可能性もあると考えられるようになりました。

王朝の流れとしては、

夏王朝(BC2000頃-BC1600頃)
    ↓
殷王朝(BC1600頃-BC1046)
    ↓
周王朝(BC1046-BC256)

となります。

もしこの記載が事実に基づくものであるなら、「夏王朝の子孫が、黄河中流から揚子江以南にやってきて始祖となった」ことになります。

もっとも河姆渡遺跡が越族の遺跡であるなら、年代的には河姆渡遺跡の方が夏王朝よりはるかに昔なので、話が合いません。ここでいう始祖になったというのは、すでにその地域に住んでいた越族の支配者になったということでしょう。

ところで、似たような話をどこかで聞いたと思います。そうです、以前のブログ
「翰苑(かんえん)を読む (前編) ~ 日本人は古代中国周王朝の末裔だった!?」(2015/10/6号)
でお話しした、
”黄河中流域にいた周の太伯が、揚子江下流域にやってきて、呉(春秋時代のです)を建国した”
という話です。

似たようなパターンだけに、真偽のほどは疑いももちえますが、ここではそれはそれとして置いておきます。

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青松光晴

Author:青松光晴
古代史研究家。理工系出身のビジネスマンとして一般企業に勤務する傍ら、古代史に関する情報を多方面から収集、独自の科学的アプローチにて、古代史の謎を解明中。特技は中国拳法。その他、現在はまっている趣味は、ハーブを栽培して料理をつくることです。
著書です。

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