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日本神話の源流(33)~日本神話のなかのゴンドワナ神話

前回は、日本の「釣針喪失譚」、すなわち海幸彦・山幸彦神話は、メラネシアあるいはスンダランドで生まれ伝わったのではないか、という話でした。そしてそれは、古い神話神話群である「ゴンドワナ型神話」に属する、という内容でした。

このように、日本神話のなかに「ゴンドワナ型神話」が見出せることがわかりましたが、他にもあるのでしょうか?。

後藤氏は以下の神話を挙げてます。

a.人間が動物界の一員だった頃(同書P240)
”アンダマン諸島では、祖先の大部分は動物の名前を持ち、その祖先はその動物と同一視される。
鷲やトカゲ、カニ、蛇、亀もかつては人間であったと考える。
アイヌの神謡「ユーカラ」では、しばしば動物が主人公として一人称で語る話がある。”

<解説>
人間が動物と同じ仲間である、という発想は、素朴です。科学的知識がない時代であれば一笑に付された思想でしょう。しかしながら遺伝子学の発達により、人間を含めたすべての動物は遺伝子レベルではつながっていることがわかった現代においては、むしろ古代人の直感、感性は正しかった、ということになります。


b.山の神とアニマル・マスター(同書P243)
”旧石器時代の彫刻にみられる女神は、狩猟採集民の間にみられる「山の神」に相当する。「山の神」の原型となる女神こそ、旧石器時代に出土するヴィーナス像であろう。
その原型は狩猟にまつわる神「アニマル・マスター」である。彼らは動物の主である「アニマル・マスター」という観念をもっていた。これは動物の支配者、狩猟されることを目的に動物の群れを放つ存在である。
アイヌのカムイの考え方はその一例である。”
<解説>
旧石器時代の女神は「山の神」であり、「アニマル・マスター」である、という思想です。縄文時代の土偶も女性像が圧倒的に多いことから、「山の神」にあたる、ということでしょうか。
ちなみに私たちは今でも、自分の妻について「うちのカミさんが・・」という場合がありますが、この「カミ」さんとは「山の神」のことであるという説があり、関連性がうかがわれます。

c.洪水神話(同書P245)
”洪水神話の起源として有力なのは、バビロニアであり、そこからギルガメッシュ抒情詩を経て、ヘブライ神話、そして旧約聖書のノアの方舟へと連なったと考えられている。
しかしゴンドワナ型神話、ローラシア神話ともに広く見られるので、旧石器時代に遡りうるモチーフである。
最初からこの世に海があり、始祖が天からあるいは舟でやってくる、とする「原初大海型」として、イザナギ・イザナミの国生み神話や沖縄の民話がある。”
<解説>
洪水神話といえば、旧約聖書の「ノアの方舟」を思い起こす人が多く、ローラシア型神話と考えられてきました。しかしながら洪水神話は世界中に広くみられるということから、より古いゴンドワナ型神話の可能性を挙げてます。
日本には原罰的な洪水神話がみられず、それが日本神話の特徴かもしれないとしてます(同書P181)。一方、洪水神話の別パターンとして「原初大海型」があり、国生み神話や沖縄民話がそれに当たるとしてます。

d.死の起源(同書P250)
誤った選択の結果、死を迎えるようになった、という話。古事記・日本書紀では、イワナガヒメとコノハナサクヤヒメのどちらかを選ぶというモチーフになっている(バナナ型神話)。
旧石器時代の遺跡には埋葬の証拠があることから、当時からすでに人類は死と再生の観念をもっていたと推測される。死の起源の神話はその当時から存在していたと推測できる。
<解説>
古事記・日本書紀では、”天孫ニニギノミコトが、イワナガヒメとコノハナサクヤヒメの姉妹との結婚をもちかけられ、美人のコノハナサクヤヒメとだけ結婚した結果、天皇の寿命が短くなった。”という有名な話です。「バナナ型神話」と呼ばれてますが、南洋に多く分布していることに加え、アフリカにも分布していることからも、ゴンドワナ型神話といえるでしょう。


d-2.脱皮型死の起源の神話(同書P253)
同じく死の起源の話であるが、かつて人間は蛇のように脱皮していたが、何らかのきっかけで脱皮できなくなったために死ぬ運命になったという話。琉球列島や台湾にある。
<解説>
上の死の起源の別バージョンです。太古の昔、人類は爬虫類の仲間の時代もあったわけで、先祖の記憶が神話に残ったという見方もできます。

e.土中誕生(同書P259)
人間は土中から出てきたとする神話。沖縄、とくに宮古・八重山の先島諸島にある。また大林太良氏によると、神功皇后が新羅から戻ったとき、黒いものをかぶった男女の英雄が土中から出現した(九州日向地方の民話、「塵袋」)という話や、甲賀三郎の説話(諏訪縁起)も、該当するとしている。

<解説>
人間の起源の話です。太古から「母なる大地」という思想があったことからしても、人間が土から生まれたというのも、自然な発想です。

e-2 ヴェジタリズム(同書P262)
土中誕生の別バージョンとして、人間は植物から生まれたとされる話。竹取物語や桃太郎も関連している可能性がある。
<解説>
上の別バージョンです。植物としては、アフリカのズールー族の”人間は葦の根本から発生した。”などの話があります。竹取物語や桃太郎も、竹や桃という植物から生まれたわけで、同じ発想です。物語が作られたのは新しい時代でしょうが、人間の深層心理のなかにあったものが物語となったのかもしれませんね。

e-3.粘土から造られた人間(同書P262)
旧約聖書「創世記」にある粘土から人間が造られたという話は、アフリカ、カナリア諸島、アンダマン諸島、メラネシア、ポリネシア、アボリジニに広がっている。土中誕生バージョンであり、旧石器時代に遡る可能性がある(同書P263)。
<解説>
人間が粘土から造られたという話は、聖書が知られてます。一般的にはそれが世界中に広まったとされてますが、分布から考えてより古いゴンドワナ型神話にあり、それが聖書に取り込まれたのではないか、と推測してます。日本にこの類の神話が残っているのかは、言及されてません。

以上を表にまとめました。赤字が日本列島です。



日本神話の中のゴンドワナ型神話 


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日本神話の源流(32)~海幸彦・山幸彦神話とゴンドワナ神話

前回は、古い神話群である「ゴンドワナ型神話」の特徴についてでした。

通説では、日本神話は大部分が新しい神話群である「ローラシア型神話」であるとされてますが、「ゴンドワナ型神話」も見出せるのでしょうか?。 

もっとも有名な神話である「釣針喪失譚」を題材に、考えていきましょう。

「釣針喪失譚」いわゆる「失われた釣針」神話は、日本でいえば、海幸彦・山幸彦神話ですが、前にお話したとおり、世界の多くの地域に残ってます。
インドネシア、メラネシア、ミクロネシア、ハワイなどにまで及んでいますが、吉田敦彦氏、大林太良氏らは、中国長江流域が発祥と推定してます。
私は、東南アジアにかつてあったスンダランドではないか、と推測していることもお話しました。
詳細は
日本神話の源流(15) ~ 本当に中国江南地方が期限か?
を参照ください。

同書では、ここで注目すべき指摘をしてます。
狩猟民や山間部では、釣針をなくす話ではなく、弓矢や槍のような飛び道具をなくす話に変換されている、というのです。これを後藤氏は、「山=狩猟」バージョンと呼んでます(同書P202)

たとえば
北海道アイヌ →縄
インドネシアのスラウェシ島トラジャ族→ 銛
・アメリカ先住民であるカナダ太平洋岸北西インディアンの海獣狩猟民ヌートカ族→ 銛
となってます。

後藤氏は、もうひとつ興味深い指摘をしてます。

それは「釣針喪失の譚」の意義についてです。すなわち「なぜ釣針喪失譚が、世界の広い地域にあるのか」、その意味についてです。

釣りや狩りが食料を得るための手段であり、生きていくうえでもっとも重要な生活の一部であったから、ということは想像がつきますが、そこからさらに踏み込んでます。

それは、”「釣り」は一種の「博打」や「占い」であったから”、というのです(同書P205)。
たしかに釣りや狩りは、腕前もさることながら、相手が自然ですから、偶然に大きく左右されます。釣りや狩りがうまくいったということは、運勢がいいと考える、あるいは考えたい、という気持ちはよく理解できますね。

また、釣針とは、「異界」とコンタクトする手段である、ともいってます。 浦島太郎も釣りに行って乙姫と会うので、この一種であるとしてます。

さらに、英雄譚の一形式である、ともいってます。そして、”英雄譚は、イニシエーション儀式を物語化したもの”(同書P206)とも述べてます。
イニシエーションとは、
特定の集団に成員として加入する際に行われる儀礼。それによって社会的・宗教的地位の変更が達成されるが、しばしば肉体的・精神的試練を伴い、その内容は外部に漏らしてはならないとされることが多い。若者組のような年齢集団への加入や成人式もその一例。加入儀礼。参入儀礼。”(大辞林第三版)

さてこの話はさておき、後藤氏は、アイヌを含めた狩猟採集民の間に伝わっていることから、「山=狩猟」型の方が古い形である、としてます。 
そこでは、主人公が得るのは嫁であり、社会的不平等は見いだせない、とも述べてます。

一方「海=釣針」型はすべて農耕漁労社会で語られているので、階層社会の成立が推測される、と述べてます。

以上から、「釣針喪失譚」の成り立ちについて、次のように推測してます。
「山=狩猟」型の古層型式からこの思想を受け継いで発達させたのが、オーストネシア社会や古代日本の釣針喪失譚ではなかろうか。
年長性原理の矛盾、兄弟や親子の葛藤が物語の基調にある。兄、父、叔父のような年長者から道具を借りてそれをなくしてしまい、責められて、なくしたものを探しにいくのは、いつも年長者。
彼は見事になくした道具を探し終え、帰還してからはしばしば、己を責めた年長者を屈服させる。

古層型式「山=狩猟型)では、冒険の結果として得るものが嫁である一方、新層型式(釣針喪失譚)では、英雄はしばしば政治的な権力を得る。
年少者が積極的に外部社会の探索を行い、新しい社会秩序を確立するというオーストロネシア社会の根幹的なイデオロギーが表現されている。”(同書P207)

さて次に伝播経緯についてす。

アフリカまで広がる類話を、ユーリ・ベリョーツキンは「見えない釣針」型説話と呼んで、次のように推測してます。なお、( )番号が、下図凡例の( )番号に同じです。
(1)アメリカ大陸、とくに北西海岸とアマゾン低地に分布
(2)失われた物が戻る、すなわち人が物を借り失うが、所有者がそれを返すように主張。物をなくした人は他界からそれを取り戻す。中央アフリカから西アフリカの海岸岸に見つかる。
(3)両型式の合体型が海幸・山幸をはじめ、インドネシアやニューギニアに広がる。(同書P213)


後藤氏はもうひとつ、「水面の美男子」型について、注目してます。

「水面の美男子」とは、男と女の出会いの場面において、女が水面に映った男の顔をみる、という話です。
メラネシア、ビスマルク諸島 パプアニューギニアに分布してます。

さらに、異界を訪れたときにその入口の木陰や木の上で休む、あるいは隠れていると、異界の娘が水くみに来たので見つかる”、という話が、ギリシア神話ペルポセネの冥界下り 朝鮮半島の地下の悪魔退治など世界中に広範囲に見い出せる、としてます。(同書P209-211)

海幸彦・山幸彦神話でも、海幸彦が豊玉姫と出会う場面で、井戸で水を汲もうとして、水面に海幸彦の姿が映った、という話が日本書紀にあります。

これらを総合的に勘案して、後藤氏は次のように推測してます。

1.ゴンドワナ型神話の要素である借りた道具、とくに狩猟具を失う話東南アジアに移動してきて古層型「山=狩猟」型を産み出す。
2.日本列島からシベリアそしてアメリカ大陸まで広がる。Y染色体C型などの北上(残存がアイヌ民族) 
3.インドネシアのマルク諸島方面で新層型(「海=釣針」型)が生み出され、パプアニューギニア方面で生まれた「水面の美男子」型のモチーフが取り込まれる
4.3の物語が北上して、日本列島にもたらされた(おそらく隼人族の祖先)。そして記紀神話の神武天皇誕生、隼人族の大和朝廷への服属の物語となった。
釣針喪失譚伝搬ルート  
これはこれでいいのですが、3つほど問題提起したいと思います。
1.新層「海=釣針」型が、インドネシアのマルク諸島で生まれた、としてるが、スンダランドで生まれた可能性があるのではないか。
⇒紀元前14000年ころまで、インドシナ半島~インドネシアにかけての海上には、スンダランドがありました。その後海底に没してしまいましたが、豊かな文明が栄えたとされてます。ここで新層「海=釣針」型の神話が生まれ、それがマルク諸島へ伝わった可能性があります。

2.
隼人族の祖先により日本列島にもたらされたとしているが、隼人族の実態はよくわかっていない。
  ⇒隼人族は、古代の九州南部にいた人々とされますが、その実態は諸説あります。オーストロネシア系でありY染色体のO1aとする説、O2a2とする説などありますが、よくわかっていません。したがって、安易に隼人族と結びつけるのは、早計です。

3.「水面の美男子」について、ギリシア神話のベルポセネの冥界下りとの関係はどう説明するか。
⇒パプア・ニューギニアで生まれたとしている「水面の美男子」ですが、そうなるとギリシア神話のベルポセネの冥界下りは、どのように生まれたのか、という疑問が生まれます。もし「水面の美男子」がパプア・ニューギニアで生まれたのなら、それがギリシアまで伝搬した、という壮大な話になってきます。
はたしてそのようなことが起こりえたのか、はよくわかりません。ただし上の図によると、釣針喪失譚はイギリスにもあります。それを東アジアから伝搬したと想定して、矢印を書きましたが、その流れのなかでギリシアに伝搬した可能性も出てきます。


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日本神話の源流(31)~ゴンドワナ型神話の特徴

前回は、「世界神話学」についてでした。それは
”なぜ中央アジアステップ地帯やアジア大陸東南部で生まれ、日本に伝搬したとされる神話が、遠く離れたアメリカ大陸やアフリカにあるのか?。”という疑問を説明するための、最新の学説です。

前回は「世界神話」の中において、新しい神話群である「ローラシア神話」について、みてきました。そして日本神話が、すべてローラシア神話というわけではなく、より古い神話群であるゴンドワナ神話も含まれているのではないか、という話でした。

今回は、そのゴンドワナ神話についてみていきます。「世界神話学入門」(後藤明)を参照します。

なおここまで、
1.現生人類がアフリカにいたときにもっていた神話(パン・ガイア神話)
2.アフリカを出てアラビア半島からインドに到達したときにもっていた神話(出アフリカ神話)
3.そこから海岸沿いを東に進み、ニューギニア・オーストラリアに到達した人々がもっていた神話(ゴンドワナ神話)
としてましたが、後藤氏の本では、それらをすべて「ゴンドワナ型神話」としてます。

ゴンドワナ型神話の特徴ですが、
”叙情詩のように一つ一つの物語が関連して発展していくという形をとらないこと。”(同書P90)
としてます。
また
”ローラシア型神話の特徴が欠如した神話”(同書P91)

”世界がすでに存在している状態から物語が始まる。”(同書P91)
としてます。

この古い神話であるゴンドワナ型神話は、アメリカ先住民の神話へも影響がある、としてます。
特に南米最南端の集団にも色濃く残っている、として、
”最初に新大陸に渡った集団が、ゴンドワナ型神話を主体とした神話を持っていた可能性は否定できない。”(P111)
と述べてます。


ゴンドワナ型神話の特徴を以下のとおり挙げてます。

1.人間、動物、および擬人化された自然現象(同書P114)
宇宙の創造を語らないゴンドワナ型神話ですが、もっとも関心の高いテーマの一つが、「人間の起源」あるいは人間や動物と自然現象との密接な関係です。
例として、
・人間は瓢箪あるいは葦から生まれ出た(中央アフリカ)
・人間が土や水の中から這い出してきた(東南アジアのネグリトやメラネシア)
・自然現象が、かつては動物ないし人間だった。たとえば風はかつて鳥だった(カラハリ・サン族)

2.死の起源(同書P117)
もともと死者は死ぬたびに蘇っていたが、「あるきっかけ」から人間は死を選択するようになった、という話です。
「あるきっかけ」による死とは、「過ち」をしたことにより死ぬことになった、あるいは「誤ったメッセージ」のために死ぬようになった、という話です(アフリカ、アンダマン諸島、インド、アボリジニ)

3.親族に騙されてわが子を殺してしまう話(同書P121)
親族同志の葛藤ともいうべき物語です。骨子として、”二人の人物(姉妹とか近い親族同志など)に子供がいて、一人が子供を殺そうと提案したので、もう一方が自分の子供を殺してしまうが、言い出した方は単に子供を隠していただけだった”という話です。しばしば助かった子供は太陽になります(インド、マレーシア、インドネシア、アフリカ、アボリジニ)

4.天体の起源(同書P125)
天体は人間や動物と同じように、かつては地上に住んでいた、あるいは最初は地下から出現した、という話です(アフリカ、アボリジニ、ニューギニア、南米、東欧、インド、中国南西部~アメリカ大陸、アイヌ、オーストラリア)。

前回まで紹介した松村氏の論文とは異なり、
西ヨーロッパを除いたほとんどの地域に分布していることがわかります。

そしてその伝搬ルートについては、人類の移動ルートと一致するとしてます。

具体的には、アフリカから出た人類の祖先が、インド~東南アジア(スンダランド)へと渡り伝えた。そこから2つのルートに分かれ、
a.東に渡り、メラネシア・オーストラリアへ
b.アジア大陸東側を北上して、シベリア~アメリカ大陸へ

と移動するとともに、神話を伝えた、としてます。

日本列島は、bのグループに属します。

以上を図示しました。図では、Y染色体すなわち男性の移動ルートを示してます。

同書に記載されているゴンドワナ型神話の分布エリアを着色しましたが、着色されてない地域、たとえばアラビア半島からイラン・パキスタン他にも、分布している、あるいはかつては分布していたことでしょう。


ゴンドワナ型神話伝搬ルート
後藤氏は、ゴンドワナ型神話の特徴について、次のように述べてます。
”ローラシア型神話のようではないが、一般化するのは至難の業。
一つだけ確実に言えることとして、人間も動物も、そして神や精霊も、地上において一緒に暮らしていたとされることである。
夜空の天体もかつては生命をもち、人々の隣で暮らしていたとされる。それらの間に上下関係、階層関係はなく、平等な、相互依存関係こそあるべき姿だという主張が、その基底にはあるように思われる。”(同書P134)


後藤氏が指摘しているとおり、一般化するのは難しいですが、感覚的にいって原始的あるいは素朴な話が多いですね。

根底にアニミズムの思想があるといえます。
アニミズムとは、
動植物のみならず無生物にもそれ自身の霊魂(アニマ)が宿っており、諸現象はその働きによるとする世界観。 E = B =タイラーは、これを宗教の原初的形態と考えた。精霊崇拝。霊魂信仰。”
(大辞林第三版より)

こうした精神は、今もわたしたち日本人のなかにも流れています。

日本人は多神教です。八百万(やおろず)の神々という発想で、無意識のうちにすべての物に魂が宿ると考えます。
家を建てるときには、必ず地鎮祭を行います。それは、
”その土地の守護神(鎮守神)を祀り、土地を利用させてもらうための許しを得る”ためです(Wikipediaより)。

また私は小さいとき、祖父母から、”人は死ぬと夜空の星になるんだよ。”といわれたものです。

皆さんもこのような信仰を、身近に感じたことがあるのではないでしょうか?。

日本人には、ゴンドワナ型神話の精神が、今も息づいているといえるかもしれません。


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日本神話の源流(30)~ローラシア神話

前回は、ゴンドワナ神話とローラシア神話についてでした。

ローラシア神話の特徴として、
1.宇宙と世界の起源
2.神々の系譜
3.半神的英雄の時代
4.人類の出現
5.王の系譜の起源
6.世界の終末(と場合によってはそこからの復活)
という一連の連続性がある、
とされてます。

つまり、”神話は本来的に体系をなしていた。”というのです。

さらに、
”神話が単独で存在すると考えるよりも、儀礼を伴って存在したと想定するほうが合理的・合目的的だろう。”
と述べてます。
これはたいへん興味深い指摘であり、のちほど取り上げます。

さて、上の1から6までの一連の流れの冒頭、すなわち「1.宇宙と世界の起源」について、さらに詳しく整理してます。
このなかには
a..混沌・暗黒
b..原初の水
c.潜水神話と漂える台地
d.生命の誕生の契機としての宇宙卵
e.世界を構成する要素を提供する世界巨人
f.世界を構成する要素を提供する世界雄牛

というテーマがあり、ここには論理的展開が認められる、というのです。

つまり、”aからe,fの順序で展開して世界が成立し、そして世界が成立した後には天と大地が出現し、神々や英雄の時代となり、文化の出現が語られる。”
としてます。
なお他書によれば、順序については、必ずしもこの通りというわけではないようです(「世界神話学入門」(後藤明)による)。

そして、この6つのすべてがインドに見られることに、注目してます。
これは、ローラシア神話をもつ人々の祖先は、すべてアラビア半島からインドにかけての地域にいたわけで、その神話(出アフリカ神話)が今でもインドに残っている、ということになります。

なお、アフリカを出る前にもともとあった神話、すなわちパン・ガイア神話にについては、
世界巨人、洪水神話などのテーマはすでにあり、出アフリカ神話にも、潜水神話のテーマがあったが、それらはローラシア神話の段階になって一連の物語に組み込まれたのであろう。”
と推測してます。

そして、
”今から4万年前のインドにおいて、それまでに神話テーマを取り込みつつローラシア神話の基礎となる神話連続が作られ、神話の体系化がなされた。
当時そこにいた現生人類に受容され、彼らが各地に移動していった結果、広がって、地域ごとにさらに独特の様式を持つようになったのだろう。
ゴンドワナ神話の担い手の集団はすでにインドの地を離れていたので、このローラシア神話の誕生を知らなかった。”

と推測してます。

aからfまでの神話が、どの地域に分布しているのか、整理したのが下の表です。

ローラシア神話分布  
 
ヴィツル氏が、世界のすべての神話を網羅的に収集できたわけでもないでしょうし、かつては存在したが、失われた神話も数多くあったことでしょう。ですからこの表だけで推測するのは、不充分ではあります。

とはいえ、ローラシア神話の「1.宇宙と世界の起源」の6つのテーマについて、すべてをもっているのはインドだけで、他の地域はいくつかをもっていないことがわかります。また地域別にみても、その分布に特徴的はみられません。

これはヴィツル氏によれば、もともと彼らの祖先がインドにいたときは6つのテーマをもっていたが、世界各地に拡散するにしたがい次第に消滅していったため、という解釈で説明できます。

日本神話については、「c.潜水神話と漂える台地」のみです。

古事記は前回お話したとおり、簡潔な表現ですが、日本書紀では、次のように詳細に描かれてます。

”昔、天と地がまだ分かれず、陰陽の別もまだ生じなかったとき、鶏の卵の中身のように固まっていなかった中に、ほの暗くぼんやりと何かが芽生えを含んでいた。やがてその澄んで明らかなものは、のぼりたなびいてとなり、重く濁ったものは、下を覆い滞って大地となった。澄んで明らかなものは、一つにまとまりやすかったが、重く濁ったものが固まるのには時間がかかった。だから天がまずでき上って、大地はその後でできた。そしてその後から、その中に神がお生まれになった。
それで次のようにいわれる。天地が開けた始めに、国土が浮き漂っていることは、たとえていえば、泳ぐ魚が水の上の方に浮いているようなものであった。そんなとき天地の中に、ある物が生じた。形は葦のようであったが、間もなくそれが神となった。国常立尊(くにたちのみこと)と申し上げる。次に国狭槌尊(くにのさつちのみこと)、次に豊斟渟尊(とよくむぬのみこと)と、全部で三柱の神がおいでになる。この三柱の神は陽気だけをうけて、ひとりでに生じられた。だから純粋な男性神であった、と。(「日本書紀」(宇治谷孟)より)

このように、順番はさておき、
a.混沌・暗黒
b.原初の水
c.潜水神話と漂える台地
d.生命の誕生の契機としての宇宙卵
の概念が含まれていることがわかります。

eの世界巨人の概念が含まれてませんが、ヴィツル氏は、
”イザナミが火の神を産む話とは対比可能かもしれない”
としてます(「世界神話学入門」(後藤明)P151より)。
また日本各地に「ダイダラボッチ」などの巨人伝説が残りますが、これも世界巨人の類といっていいかもしれません。

最後の「世界雄牛」については、そもそも牛が日本にもたらされたのは古墳時代以降でしょうから、存在しなかった、としていいでしょう。

こうしてみると、日本神話は、ローラシア神話のほとんどの要素をもっている、といえます。

では、日本神話はすべてローラシア神話なのか、というとそうともいえません。

ヴィツル氏が述べているとおり、現生人類がアフリカにいたときもっていた「パンガイア神話」にすでに世界巨人・洪水神話があり、インドに到達したときもっていた「出アフリカ神話」にも、潜水神話があったとしてます。

そうなると、アフリカにあった世界巨人・潜水神話が南洋のゴンドワナ神話に伝わり、それが日本列島に伝わった可能性もあります。

それを検証するには、ゴンドワナ神話をさらに詳しくみる必要があります。

もうひとつ日本神話に特徴的なこととして、ヴィツル氏は、6.世界の終末(と場合によってはそこからの復活)がない、ことを挙げてます(「「古事記」天石屋戸神話における天宇受売命ー発話と露出と笑いー」(井上さやか)P16より、原出典は「神話の「出アフリカ」-比較神話学が探る神話のはじまり」(マイケル・ヴィツル))。

世界の終末といえば、旧約聖書の終末論(最後の審判)を想起します。
”世界の歴史は終末に向って進んでおり,この終末において人類の諸民族に究極的な神の審判が下り,試練によって清められたイスラエルの民には救済がもたらされるとともに,人類史が完成に到達するものと考えられた。”(ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)

たしかに日本神話には、このような内容がないですね。

これはよくよく考えてみると、不思議な話です。
ローラシア神話とはひとつの壮大なストーリーであり、そのクライマックスが、終末論であるわけです。いうなれば、この終末論を伝えるために、宇宙の起源から始まって、神々の時代から王の系譜へと、物語を展開するともいえます。

そのもっとも大切な終末論が日本神話にないのは、なぜなのか。

「神話が伝播するうちに、途中で消えてしまったのだ」というのは、終末論の大切さを考えると、考えにくいですね。

「日本人は未来に対して楽観的で能天気だから、時代を経るにしたがって忘れてしまったのだ。」という解釈もありうますが、しっくりこないですね。

皆さんは、どのように考えるでしょうか?。

最後の審判
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日本神話の源流(29)~「世界神話」のなかの天地創造

前回は、現生人類がアフリカを出る前にもっていた神話があり、それが人類の拡散とともに世界に広がり各地域で発展した、という「世界神話」仮説についてでした。
具体的には、
1.パン・ガイア神話
 アフリカにいた人々が、出アフリカ前にもっていた神話
2.出アフリカ神話
 アフリカを出て、アラビア半島からインドに到達した人々がもっていた神話
3.ゴンドワナ神話
 アラビア半島・インドから東へ向かい、ニューギニア・オーストラリアに到達した人々がもっていた神話
4.ローラシア神話
(1)アラビア半島・インドから東へ向かい、東南アジア~中国~シベリア~北米~南米と到達した人々がもっていた神話
(2)アラビア半島・インドから北へ向かい、中央アジアステップ地帯にと到達した人々がもっていた神話
(3)アラビア半島・インドから北東に向かい、ヨーロッパや、アフリカ北部に到達した人々がもっていた神話
です。
 
このうち、このなかで3番目に古いゴンドワナ神話と、もっとも新しいローラシア神話について、みていきます。

 まずゴンドワナ神話ですが、特徴として、
1.創造神話の欠如(すでに存在する世界に人類が出現するという形が一般的)
2.女性呪術師の欠如

が挙げられてます。

ローラシア神話では、
1.宇宙と世界の起源
2.神々の系譜
3.半神的英雄の時代
4.人類の出現
5.王の系譜の起源
6.世界の終末(と場合によってはそこからの復活)

という一連の連続性がある、としてます。

ゴンドワナ神話では「創造神話が欠如」しているのに対して、ローラシア神話では「宇宙と世界の起源」があり、対照的です。

創造神話というと、聖書を思い出します。聖書においては、この世の初めに存在するものは、神のみです。

"はじめに神は天と地とを創造された。 
地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをおおっていた。 
神は「光あれ」と言われた。すると光があった。4 神はその光を見て、良しとされた。神はその光とやみとを分けられた。 
神は光を昼と名づけ、やみを夜と名づけられた。夕となり、また朝となった。第一日である。"(創世記 1章1-8節(口語訳聖書)、Wikipediaより) 
 
このように聖書では、神が天地を創造します。創造神話があるので、ローラシア神話ということになります。

天地創造


一方、日本の神話はどうでしょうか。古事記を読み下しします。

天地初めて發けし時、高天原に成りし神の名は、天之御中主神、次に高御産巣日神、次に神産巣日神、この三柱の神は、みな獨神と成りまして、身を隱したまひき。
次に国稚く浮ける脂の如くして、海月なす漂えるとき、葦牙の如く萌え騰る物によりて、成りし神の名は宇摩志阿斯訶備比古遲神、次に天之常立神。”

聖書のように、神が天地を創造した、という形にはなってません。天地ができたあとに天之御中主神(あめのなかぬし)高御産巣日神(たかむすび)神産巣日神(かみむすび)の三神が生まれてます。

では、創造神話がないといえるのかというと、そうではありません。

冒頭に「天地が初めて撥けし」とあります。創造神話の欠如を、
すでに存在する世界に人類が出現するという形」
と定義すれば、これにはあてはまりません。
逆にきわめて短い描写ですが、ローラシア神話の条件である「宇宙と世界の起源」が語られています。つまり創造神話があるといえます。

日本書紀では、もう少し詳細に表現されてます。これは次回、とりあげます。

このように見てくると、日本神話はローラシア神話の特徴をもっている、といえます。

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青松光晴

Author:青松光晴
古代史研究家。理工系出身のビジネスマンとして一般企業に勤務する傍ら、古代史に関する情報を多方面から収集、独自の科学的アプローチにて、古代史の謎を解明中。特技は中国拳法。その他、現在はまっている趣味は、ハーブを栽培して料理をつくることです。
著書です。



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