謎の国々は実在したか?(10) ~ アカウミガメと浦島太郎
今回は、「カメ」の話です。何で突然「カメ」の話なの、と思った方もおられると思います。
侏儒(しゅじゅ)国、つまり現在の高知県足摺岬近辺の「唐人駄馬(とうじんだば)遺跡」のひとつに、「亀石」と呼ばれる巨石があることは、お話しました。その「亀石」は、単に"「カメ」の形をしていて面白いからそこに置いた"、といったことではなく、「祭祀」あるいは「信仰」の対象とされていたとみられています。つまり、古代日本の「カメ信仰」に基づいたものだったというわけです。
古代中国でも、亀の甲羅を火で焼き、その模様で占いをしました。その模様が、甲骨文字であり、やがて漢字に変化していきました。また、家を支える4本の柱の下に生きた亀を埋めると、その家は長く持つという風習もありました。今でも、ハワイでは、「カメ」は神様とされてます。
日本は、ウミガメそのなかでもアカウミガメの産卵地で知られています。北は、千葉・茨城の房総半島から、南へ、伊豆、静岡、三重、和歌山、徳島、高知、鹿児島、沖縄まで、産卵地です。アカウミガメは、温帯から亜熱帯地帯まで、広く分布します。
<アカウミガメ>
”アカウミガメは信仰の対象としてもしばしば用いられる。
長寿の象徴、卵を多く産むため子宝の象徴としても信仰されている。網の中にアカウミガメが迷い込んだとき、御神酒を掛け海に返すという風習が残っている地方もある。静岡県御前崎市漁業関係者の間では大漁、豊漁のシンボルとして敬愛され、死んだアカウミガメを供養した「亀塚」が市内各所に実在している。”(Wikipediaより)
ところで、ここ日本で産卵、生まれた「子カメ」は、どこに旅立つと思いますか?。
アカウミガメの生態については、まだわかっていないことが多いのですが、最近の研究により、日本で生まれたアカウミガメは、北太平洋海流に乗りアメリカ西海岸沖へ、さらにそこから南下してメキシコ沖で成長し、やがて北赤道海流に乗り、日本に帰ってくることがわかってきました。
親ガメになる確率は、5000分の1と言われており、たいへんな試練の旅ですね。しかし、それでも小さい体ながら、苦労に苦労を重ねて、太平洋を横断するわけです。
<アカウミガメの回遊ルート>
(NPO法人 屋久島うみがめ館HPより)
このルート、どこかで見ませんでしたでしょうか。
そうです。古代日本人が太平洋を舟で渡ったとした場合の想定ルートです。今のところ、日本で生まれたアカウミガメがエクアドル沖までたどりついたという調査報告はありませんが、途中までほぼ同じルートです。逆に言えば、さほど泳ぐ力がなく、潮の流れに任せて進むしかない「子カメ」でさえ、最終的には、アメリカ西海岸~メキシコ沖までにたどりつくことができるのですから、人間が乗った舟がたどりつくことも可能と言えます。
そして、そこで成長して大きくなったアカウミガメは、やがて西へ向かい泳ぎに泳いで、ついに生まれ故郷の日本に戻ってくるのです。親ガメとなってますから、この間、数十年が経過していると思われます。それまで生まれ故郷を忘れずにいて、やがて子孫を増やすために戻ってくるなど、ロマンを感じますね。
ところで、われわれ日本人に最もなじみ深い昔話のひとつに、「浦島太郎」があります。皆さんご存知の話ですが、
”浜でいじめられていた亀を助けたお礼に、亀の甲羅に乗って、竜宮城へ行き乙姫と出会い、楽しい暮らしを過ごします。やがて生まれ故郷に帰りたくなり、戻ってきますが、すでにそこは遠い未来の世界になっていた。自分の知っている人は誰もおらず、悲しくなった浦島太郎は、開けてはいけないと言われていた玉手箱を開けてしまいます。するとそこからもうもうと煙が出て、浦島太郎はおじいさんの姿になってしまった。”
というストーリーですね。
この話も、何の脈絡もなく、ただの思いつきで作られた、ということではなく、何がしかの伝承などを基に作られたのではないでしょうか?。
もしかすると、”昔々、ここ日本から舟に乗り、カメが黒潮に乗っていくルートで、南米エクアドルにたどりついた人がいた。見るもの、聞くものすべて新しく、しかも赤道直下の国なので食べる物も豊富にあり、とても過ごしやすく、楽しい日々を送った。そこで何十年もすごしたが、やはり生まれ故郷の日本に帰りたくなり、現地の人々に別れを告げて、舟で日本に向かった。ついに日本にたどりついたものの、時代はすでに変わっていて、知っている人は、誰もいなかった。”
という話が実際にあり、それが、「浦島太郎」という昔話となったのかもしれません。
そう考えると、なんとも壮大な話になりますね。皆さんは、どう考えますか?。
<浦島太郎絵図>
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