古墳は語る(6)~甕棺分布と消滅の謎

甕棺墓の風習が、弥生時代に中国沿岸部から直接九州北部に伝播したことは、確認できました。

そして次第に周囲に広まっていくわけですが、その広まり方は、特徴的です。図示します。以下、「九州の甕棺ー弥生時代甕棺墓の分布とその変遷ー」(藤尾慎一郎)からです。」

<九州における大型甕棺分布図>

九州甕棺分布2



”全時期的には九州の西半に分布し,とくに北部九州地城に集中して分布することを示しているのである。なかでも唐津,糸島,早良,福岡・春日の玄界灘沿岸地域,向陸部地域,神埼,佐賀,小城の有明海北岸地域,熊本県白川流域に集中した分布をみせている。”
そして
長崎県対馬,福岡県宗像,遠賀川下流域,豊前,豊後,日向,大隅,天草にはまったく分布しない。”
という、極めて偏った分布になっています。

これを九州北部について、支石墓の分布範囲と重ねて、図示します。

  甕棺墓分布

見てのとおり、支石墓が福岡平野より西にしか分布していないのに対して、甕棺は、福岡平野(早良含む)やさらに東の遠賀川上流東側にまで分布しており、支石墓より範囲が広がってます。

福岡平野には、豪華な副葬品の墓が数多くあり、三種の神器(玉・鏡・剣)が出土した吉武高木遺跡・須玖岡本遺跡があります。そうしたことから、支石墓の風習をもった集団より、はるかに大きな勢力をもった集団だったと言えます。

ところがよく見ると、福岡平野の東、遠賀川下流域より東には、全く分布してません。

ということは、福岡平野を中心拠点とした集団と、遠賀川流域以東の集団とは、別の集団であったと推定されます。前に、神武天皇の東征出立地が、遠賀川下流域の岡田宮であることを、お話ししました。このことと何か関連がありそうな気がしますね。

なお、遠賀川下流域西側には、あの宗像大社があります。先般、沖ノ島を含む三つの信仰の場からなる宗像大社と沖ノ島祭祀を行った古代豪族宗像氏 が眠る新原・奴山古墳群が、「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」として、世界遺産 に登録され、話題になりました。宗像氏は、海人(あま)族として知られてます。一方、博多湾岸には志賀海神社があり、こちらは同じ海人族でも安曇(あずみ)族です。このことと、甕棺分布がどのように関係するのか、注目されるところです。

さて、かように流行した甕棺ですが、弥生時代後期に、なぜか急に使用されなくなり、木棺や石棺に変わっていきます。

埋葬という人生の根源にかかわる風習が変わったというからには、大きな力が働いたことは間違いありません。外来文化の影響とか、宗教上の理由とか、征服者がいたとか、いろいろ言われてますが、決め手となる根拠に欠けます。

甕棺の製作には専門家集団がいたと考えられており、製作労力・コストもたいへんなものだったはずです。当時は、内乱もあったでしょうから、次第に製作が容易な木棺や石棺に移行していった可能性もあります。

あるいは、墳丘墓へ移行するにつれ、割れやすい甕棺が避けられたとの説もあります。

何に関しても言えることですが、「理由」というのはよくわからないものです。一つの要因ということとは限らず、様々な要因が複合的に重なり、次第に消滅していったということではないでしょうか。いずれにしろ、その後、墳丘墓中心へと変わっていきます。

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甕棺の分布と稲作

>(甕棺)全時期的には九州の西半に分布し,とくに北部九州地城に集中して分布することを示しているのである。

〇今回の記事も興味深い記事でした。
 甕棺の分布ですが、稲作の分布と一致しているような感じをうけます。すなわち、稲作で豊かになった者だけが高価な甕棺に入ることができたと思われますが?
 草々

興味深い記事ありがとうございます。天日槍とアカル姫の神話を思い出しました。
古代史の謎1のkindle版はありますか?

Re: 甕棺の分布と稲作

レインボーさんへ
コメントありがとうございます。

>  甕棺の分布ですが、稲作の分布と一致しているような感じをうけます。すなわち、稲作で豊かになった者だけが高価な甕棺に入ることができたと思われますが?

「甕棺=稲作で豊かになった者」という視点は、面白いですね。もっとも、水稲稲作が九州北部に伝わったのは紀元前10世紀にさかのぼるとされてますので、単純な図式ではない気がしますが、何がしかの関連はあるかもしれませんね。

Re: タイトルなし

記紀を読んだばかりの素人さんへ

コメントありがとうございます。
天日槍の話は、どのように解釈するのか様々で、面白いところです。

「図でわかりやすく解き明かす 日本古代史の謎」シリーズ第一弾は、いずれkindleにする予定です。
時期は未定です。
プロフィール

青松光晴

Author:青松光晴
古代史研究家。理工系出身のビジネスマンとして一般企業に勤務する傍ら、古代史に関する情報を多方面から収集、独自の科学的アプローチにて、古代史の謎を解明中。特技は中国拳法。その他、現在はまっている趣味は、ハーブを栽培して料理をつくることです。
著書です。

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