イネは語る(2)~縄文時代にやってきた稲作
前回のとおり、稲作は約7000年前に長江中下流域にて始まりました。それより古い遺跡も発見されてますが、出土した種子などの年代が測定されていないため、現時点では最古は7000年前ということになります(佐藤洋一郎氏による)。
その稲作が日本列島に伝わったとしてます。
かつては稲作は、弥生時代の紀元前3~4世紀頃に伝わったとされてきました。それが弥生時代の幕開けでもあったわけです。
ところが遺跡の発掘調査により、日本各地で縄文時代に稲作されたとみられるプラントオパールが発見され、日本列島における稲作開始時期は、大きく時代をさかのぼることとなりました。
ここでプラントオパールとは、
”イネ科植物の葉に含まれるケイ酸が化石化したもの。枯れた後も、その植物に特有な細胞の形のままで残り、ガラス質で、安定性が高い。”(大辞林 第三版より)
ちなみに、ケイ酸とは、ケイ素、酸素、水素の化合物ですが、ケイ素(Si)と言えば、最近よく美容・健康で話題になる「シリカ」ですね。人間の人体にも必須で、骨の成熟にも欠かせない成分です。植物にとっても必須で、茎は太く頑丈に、葉は上向きで硬く厚くなるそうです。
実は「二酸化ケイ素」の結晶が「水晶」です。「水晶」に含まれている「ケイ素」がイネに含まれているのですから、イネの茎や葉がピンとしている理由もわかる気がします・・・。以上、豆知識でした。
話を戻しましょう。
現在、最古の事例としては、6400年前の朝寝鼻貝塚(岡山県)検出のプラントオパールがあります。
(「稲の日本史」(佐藤洋一郎)より)
縄文前期となると、岡山県近辺の瀬戸内海沿岸、九州中北部に集中しており、あとは畿内に一つのみです。すべて西日本ですね。なおこの時代のイネは、熱帯ジャポニカであり、陸稲であったと考えられます。
では縄文稲作は、どこから伝わったのでしょうか?。
”最古の稲作遺跡は浙江(せっこう)省・河姆渡(かぼと)遺跡と羅家角(らかく)遺跡で、約7000年前のものである。江西省の仙人洞遺跡や湖南省玉蟾岩(ぎょくせんがん)遺跡、韓国ソロリ遺跡には1万年をはるかに超える記録があるが、いずれも地層の年代を測定したものであって出土した種子(ソロリ遺跡)やプラントオパール(仙人洞遺跡)の年代が測定されたわけではない。”
”アジアでの稲作は数千年前から1万年前の間に始まったと考えるのがよいようである。”
(「稲の日本史」(佐藤洋一郎)より)
こうしたことから、長江中下流域から伝わった、ということが考えられます。
それが朝鮮半島を経ての陸路なのか、直接舟で伝えられた海路なのかは、確実なことはわかってません。
さらにここで佐藤氏は、もうひとつのルートを提起してます。
南方から舟で伝わった九州南部へ伝わったという「海上の道」です。
(「稲の日本史」(佐藤洋一郎)より)
”熱帯ジャポニカは中国南西部からインドシナ奥地にかけてと、フィリピンからインドネシアなど熱帯島嶼部に広がっている。”
”熱帯ジャポニカの固有の遺伝子をもつ品種が、台湾の山岳部から南西諸島を経て九州に達していた。”
”柳田國男がかつて「海上の道」と呼んだルートは捨てきれない魅力をもっている。”
”もともと海上の道は海人たちの道であった。舟を操り大海原を駆け巡ることのできた人々が、熱帯ジャポニカをもたらしたと考えられる。”
長江中下流域で7000年前に始まった稲作は、熱帯ジャポニカであったと考えられます。その熱帯ジャポニカは、中国南西部からインドシナ奥地と、さらに南方のフィリピン、インドネシアなど島嶼部に広がってます。イネの原種は南方にありますから、こうした東南アジア島嶼部から、海路を経て九州に伝わったとのではないかとする考えは、ごくごく自然な推論です。
ここで柳田国男氏の「海上の道」が出てきました。以前、このブログでも、「新・海上の道」についてお話しました。「新・海上の道」とは、元東京都教育庁職員の小田静夫氏が提唱してます。
簡単にいうと、旧石器時代の石斧の分布などから、日本人の祖先は、3~4万年前に東南アジア島嶼部から黒潮に乗って、琉球列島、本州太平洋沿岸と渡り、神津島で黒曜石を発見した、としてそのルートを「新・海上の道」と名づけたものです。詳しくは
日本人は、どこからやってきたか? (18) ~ 古代に「海上の道」があった!!②
を参照ください。
( )
このルートでの石器伝搬は3~4万年前であり、今回の稲作伝搬のはるか昔のわけですが、1万年前にも同様な人と文化の移動はあったでしょう。ですからイネの伝搬もこのルートだったと考えても、なんら不自然ではありません。
ただしこの説の弱いところは、東南アジア島嶼部に1万年前にさかのぼるような稲作の遺跡が発見されていないことです。この点については、のちほど取り上げます。
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その稲作が日本列島に伝わったとしてます。
かつては稲作は、弥生時代の紀元前3~4世紀頃に伝わったとされてきました。それが弥生時代の幕開けでもあったわけです。
ところが遺跡の発掘調査により、日本各地で縄文時代に稲作されたとみられるプラントオパールが発見され、日本列島における稲作開始時期は、大きく時代をさかのぼることとなりました。
ここでプラントオパールとは、
”イネ科植物の葉に含まれるケイ酸が化石化したもの。枯れた後も、その植物に特有な細胞の形のままで残り、ガラス質で、安定性が高い。”(大辞林 第三版より)
ちなみに、ケイ酸とは、ケイ素、酸素、水素の化合物ですが、ケイ素(Si)と言えば、最近よく美容・健康で話題になる「シリカ」ですね。人間の人体にも必須で、骨の成熟にも欠かせない成分です。植物にとっても必須で、茎は太く頑丈に、葉は上向きで硬く厚くなるそうです。
実は「二酸化ケイ素」の結晶が「水晶」です。「水晶」に含まれている「ケイ素」がイネに含まれているのですから、イネの茎や葉がピンとしている理由もわかる気がします・・・。以上、豆知識でした。
話を戻しましょう。
現在、最古の事例としては、6400年前の朝寝鼻貝塚(岡山県)検出のプラントオパールがあります。

(「稲の日本史」(佐藤洋一郎)より)
縄文前期となると、岡山県近辺の瀬戸内海沿岸、九州中北部に集中しており、あとは畿内に一つのみです。すべて西日本ですね。なおこの時代のイネは、熱帯ジャポニカであり、陸稲であったと考えられます。
では縄文稲作は、どこから伝わったのでしょうか?。
”最古の稲作遺跡は浙江(せっこう)省・河姆渡(かぼと)遺跡と羅家角(らかく)遺跡で、約7000年前のものである。江西省の仙人洞遺跡や湖南省玉蟾岩(ぎょくせんがん)遺跡、韓国ソロリ遺跡には1万年をはるかに超える記録があるが、いずれも地層の年代を測定したものであって出土した種子(ソロリ遺跡)やプラントオパール(仙人洞遺跡)の年代が測定されたわけではない。”
”アジアでの稲作は数千年前から1万年前の間に始まったと考えるのがよいようである。”

(「稲の日本史」(佐藤洋一郎)より)
こうしたことから、長江中下流域から伝わった、ということが考えられます。
それが朝鮮半島を経ての陸路なのか、直接舟で伝えられた海路なのかは、確実なことはわかってません。
さらにここで佐藤氏は、もうひとつのルートを提起してます。
南方から舟で伝わった九州南部へ伝わったという「海上の道」です。

(「稲の日本史」(佐藤洋一郎)より)
”熱帯ジャポニカは中国南西部からインドシナ奥地にかけてと、フィリピンからインドネシアなど熱帯島嶼部に広がっている。”
”熱帯ジャポニカの固有の遺伝子をもつ品種が、台湾の山岳部から南西諸島を経て九州に達していた。”
”柳田國男がかつて「海上の道」と呼んだルートは捨てきれない魅力をもっている。”
”もともと海上の道は海人たちの道であった。舟を操り大海原を駆け巡ることのできた人々が、熱帯ジャポニカをもたらしたと考えられる。”
長江中下流域で7000年前に始まった稲作は、熱帯ジャポニカであったと考えられます。その熱帯ジャポニカは、中国南西部からインドシナ奥地と、さらに南方のフィリピン、インドネシアなど島嶼部に広がってます。イネの原種は南方にありますから、こうした東南アジア島嶼部から、海路を経て九州に伝わったとのではないかとする考えは、ごくごく自然な推論です。
ここで柳田国男氏の「海上の道」が出てきました。以前、このブログでも、「新・海上の道」についてお話しました。「新・海上の道」とは、元東京都教育庁職員の小田静夫氏が提唱してます。
簡単にいうと、旧石器時代の石斧の分布などから、日本人の祖先は、3~4万年前に東南アジア島嶼部から黒潮に乗って、琉球列島、本州太平洋沿岸と渡り、神津島で黒曜石を発見した、としてそのルートを「新・海上の道」と名づけたものです。詳しくは
日本人は、どこからやってきたか? (18) ~ 古代に「海上の道」があった!!②
を参照ください。

( )
このルートでの石器伝搬は3~4万年前であり、今回の稲作伝搬のはるか昔のわけですが、1万年前にも同様な人と文化の移動はあったでしょう。ですからイネの伝搬もこのルートだったと考えても、なんら不自然ではありません。
ただしこの説の弱いところは、東南アジア島嶼部に1万年前にさかのぼるような稲作の遺跡が発見されていないことです。この点については、のちほど取り上げます。
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