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宗像神を祭る神社の全国分布(7)~津軽のムナカタ神社

さて宗像神信仰は、古代から広く分布していたことが、データからも確認できました。

今回は、現代においても顕著に分布している地域をみていきましょう。それを知ることにより、伝播の姿がみえてくるかもしれません。

論文で挙げられている地域と信仰は、
1.津軽のムナカタ神社
2.栃木の田心信仰
3.千葉印旛沼周辺の宗像神社群
4.中国山地の宗像神

です。
以下、概要をまとめます。

1.津軽のムナカタ神社

「平成データ」によると、少なくとも昭和期には、12社もの胸肩神社と1社の宗像神社が存在してます。
さらに胸肩神社にならなかった宗像系神社もあります。そのうちのひとつ、青森県庁近くにある善知鳥(うとう)神社の祭神は、宗像三女神です。ちなみに津軽の版画家として有名な棟方志功(むなかたしこう、1903-1975)氏は、その氏子の家に生まれ、宗像族であることを、誇りにしていたそうです。

なぜ九州北部から遠く離れた津軽の地に、多くのムナカタが祭られているのでしょうか?

実はとても興味深いことがあります。

青森県といえば、初期の水田遺跡が出土したことで知られていることは、前にお話ししました。その遺跡と、ムナカタ神社が、近い位置にあるのです。

下の図は、ムナカタ神社と弥生の水田遺跡を記した図です。

津軽ムナカタ神社  
 弥生水田として知られる「垂柳地区」周辺に、ムナカタ神社がありますね。また「垂柳」よりさらに古い水田が、「砂沢地区」で発見されてます。これは、宗像神の分布するルート上にあるともいえます。

下の図は、以前示した水田稲作と遠賀川式土器の伝播推定ルートです。
赤が水田稲作の広がり、青が遠賀川式土器の広がりルートです。


水田稲作と遠賀川式土器の広がり 

(平成20年度 桜土手古墳展示館特別展「古の農ー古代の農具と秦野のムラ」より)

実は「垂柳地区」で、遠賀川系の壺などが出土してます。遠賀川といえば、福岡県の旧宗像郡内を流れてますね。
またここでは省略してますが、宗像系式内社は、米子市、舞鶴市、小松市、能登半島、富山、新潟と日本海の道に沿っています。

水田稲作、遠賀川式土器の伝播とともに、ムナカタ神社も伝わったようにみえますね。

さらに矢田氏は、津軽に来た九州氏族は、宗像族だけではないらしい、としてます。

”鰺ケ沢町を中心に、胸肩神社の分布内に9社もの高倉神社が分布する。高倉の名をもつ神社は、中世の高倉天皇または以仁(もちひと)王を祭る神社を除けば、全国で29社しかない。このように集中するのはきわめて異例である。”

”高倉神社の祭神は、本来高倉下(タカクラジ)命である。この神は、古事記・日本書紀に、神武東征の時に熊野で神武一行を救ったとされるので、熊野地方の4社などで祭られている。
この神は、「先代旧事本紀」にニギハヤヒノミコトの大和入植以前の子の天香語山(アマノカゴヤマ)命の別名とされている。”

”この高倉神社の古社7が、宗像市の隣の遠賀郡岡垣町にある。その祭る神は大倉主(オオクラヌシ)命とツブラヒメノミコトという珍しい神で、「日本書紀」仲哀紀に仲哀天皇らが遠賀川河口の港に入ってとき出てくる。この大倉主命は、タカクラジと同一神と考える人が多い。”

”以上のことから、北部九州の物部系の人々が、宗像神を祭る人々と同様、古代以前に津軽に入った可能性が考えられる。”

またまた新しい神様が出てきました。「タカクラジ」です。神武東征の際、熊野で悪神の毒気によって倒れましたが、タカクラジがもたらした剣によって覚醒した、という話です。

ちなみにこの剣は、布都御魂ともいわれ奈良県天理市の石上神社に祀られてます。

「先代旧事本紀」によれば、「タカクラジ」は、ニギハヤヒの子のアマノカゴヤマと同一とされてます。ニギハヤヒは物部氏の祖神とされてますから、タカクラジは物部系です。このことは、布都御魂が祀られている石上神社が物部系であることとも、合致してます。

そして高倉神社の古社7社が、宗像市の隣の遠賀郡岡垣町にあるということは、物部氏もそこからやってきた可能性が高い、ということになります。

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テーマ : 歴史
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プロフィール

青松光晴

Author:青松光晴
古代史研究家。理工系出身のビジネスマンとして一般企業に勤務する傍ら、古代史に関する情報を多方面から収集、独自の科学的アプローチにて、古代史の謎を解明中。特技は中国拳法。その他、現在はまっている趣味は、ハーブを栽培して料理をつくることです。
著書です。



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