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宗像神を祭る神社データは語る(10)~中国山地の宗像神

広島県は、宗像神を祭る神社が最も多いのですが、その分布をみてみましょう。

図7を見てください。上段の数字は各郡の全神社数に対する宗像神を祭る神社の比率、下段の数字は純宗像系神社(宗像神社を含む)の数です。
宗像神は、安芸の厳島神社のある海岸地帯ばかりでなく、内陸部にも多く、特に現在三次(みよし)市の一部となっている旧三谿(みたに)郡で、最も高い集中を示してます。ではなぜこのような山奥に、宗像神が祭られているのでしょうか。

広島県宗像神社

矢田氏は次のように論説してます。長くなりますが、詳細に論じており、とても興味深いので、引用させていただきます。
”このあたりは、島根県江津市に河口を持つ江(ごう)の川の流域である。図7のとおり、江の川は広島県東部の山間部に広い流域を持ち、流域面積は広島県全体の面積の3分の1に近い。宗像神は、このような江の川の支流に沿って、祭られている。旧三谿郡は、その名が示すように東・南方からの馬洗(ばせん)川、北方からの神野瀬(かんのせ)川、北西からの三川が合流する交通の要衝である。江の川から入り、瀬戸内海方面に出るにも、岡山県方面に向かうのも、ここを経由することになる。
この地帯はまた、岡山県の西部を流れる高梁(たかはし)川の上流域と近い。有名な帝釈峡(たいしゃくきょう)も、岡山県の高梁川支流の成羽(なりは)川(広島県では東条川)に流れ込む渓谷である。このあたりは内陸交通の要衝であるとともに、岡山県を通って兵庫県まで続く吉備高原の西の入り口である。”

【解説】
三谿(みたに)郡は、山陰と瀬戸内海を結ぶまさに「交通の結節点」といえますね。この地には、弥生時代に「四隅突出型墳丘墓」が早い段階で築造されたことで知られてます。「四隅突出型墳丘墓」は、山陰地方を代表する特異な形状をした墳墓ですが、のちに吉備にも築造されました。旧三谿(みたに)郡には、古代から巨大勢力であった出雲と吉備をつなぐ役割があったことが窺われますね。

”この帝釈天峡周辺は、縄文時代を中心とする多くの遺跡で有名である。ここからは九州南部に起源を持つ縄文前期(約6000年前)の轟B式土器が出土している。この土器は、中国地方では山陰に多く分布し、山陽には少ない。形式から見ても、山陰から帝釈天経由で山陽にこたらされたとみられている。
この土器は、最近宗像市のさつき遺跡で、これに続く時期の曽畑(そばた)式土器と共に出土している。これらの形式の土器は、遠賀川河口から下流域の多数の貝塚から出土しており、さらに海を渡って釜山市の東三洞(とんさんどん)貝塚など朝鮮半島南部の遺跡からも出土していて、北部九州海人族の広域活動で拡散したものと考えられている。
曽畑式土器は沖ノ島からも大量に見つかっており、これらの土器の伝播に宗像から遠賀川河口付近の海人族が関与した可能性が高い。この時期に宗像神信仰がすでにあったかはわからないが、宗像海人族が縄文時代以来中国山間部とつながりを持っていたことが推定できる。”


【解説】
このことをはっきり示唆する例として、「分銅形土製品」を挙げてます。弥生時代中期から後期のはじめにかけての中国地方や愛媛県などの諸遺跡から出土する奇妙な形の土器です。
出雲を代表する西川津遺跡から出土した「分銅形土製品」は、岡山県北部から広島県北東部にかけて分布するクローム鉄鉱というきわめて希少な鉱物を原料として作られているそうです。またこの遺跡から出土した北部九州型の漁業用の石錘(せきすい)(弥生時代前期から中期)も同一の原料から作られているとのことです。
この鉱物は先の広島県の西城川、岡山県の成羽川・高梁川、鳥取県の日野川の上流域に分布しており、帝釈天はその西の端に当たります。
そしてこの地域には、宗像神を祭る神社が集中的に分布してます。西川津遺跡との関連から、”土地を離れられない農民に代わって、宗像神を祭る人々が原料の採取と運搬に関わった。”と推測してます。

さらに、高梁川上流域には、他にも多くの鉱産資源があることから、”その情報を弥生集落にもたらし、採取と運搬に携わったのが、宗像神を祭る人々だったのではないか。”と述べてます。

広島県の鉱床が岡山県側に多く、「分銅形土製品」が岡山県に多いのと対応して、広島県の宗像系神社も岡山県側に多いことから、”宗像族が分水嶺を越えて瀬戸内海方面へのルートを開拓していたことを示す。このような南北交通の起源は、縄文時代にまで遡るようである。”と述べてます。

他にムナカタと縁のあるこの時期の出土品として、中国系の土笛(陶塤(とうけん))があります。西川津遺跡からは、隣り合うタテチョウ遺跡と合わせて、38個も出土しており、日本最多だそうです。
この土笛の出土は、旧宗像郡の2個(宗像市と福津市)が最西端で、ムナカタ経由で日本海沿岸に広まったものと考えられています。

以上の二例より以降に重要になったと思われる中国山地縦断ルートを挙げてます。丹波市の氷上回廊(ひかみかいろう)です。

”このルートの分水界の高さは95mしかなく、重量物を水運で運ぶのに適している。このルートの入口は舞鶴港外の栗田湾に注ぐ由良川であて、河口から約10km遡った河畔にタゴリを祭る志高神社がある。福知山市の東で土師(はぜ)川に入りさらに竹田川に入るが、このあたりにも宗像神を祭る神社が多い。竹田川流域には市島町という地名もある。丹波市春日町で本流と分かれ、黒井川を西流し突き当たる辺りにタゴリを祭る楯縫神社がある。ここを南に折れると分水界で、殆ど高低差なく加古川の流域に入る。このルートに沿って宗像神を祭る神社が多いが、中でも集中するのが、西方に分岐する万願寺川に沿った加西(かさい)市域である。”

氷上回廊周辺宗像神社 
【解説】
加西市に三女神のみを祭る石部(いそべ)神社があります。石部神社は、前にお話した延喜式内社社名系統数で、13社(8位)と古代に栄えていた神社です。

”イソベを名とする神社(磯部と書かれることが多い)は全国で30社あるが、おおむね出雲系の神を祭り、宗像神を祭るのはここだけである。祭神として多いのは、(天日方、アメノヒカタ)奇日方(以下クシヒカタ)である。上記分水界にあるイソベ神社も、この神を主神としている。この神は「旧事記」にオオナムチ三世の孫として出ていて、父はオオナムチとタギツとの子八重事代主(ヤエコトシロヌシ)神とされている。イソベ社に出雲の主神オオナムチよりもこの神が多いのは、このルートが比較的後で開発されたからである。”
”このルートに沿って、宗像神でもタゴリを祭る社が多く、アジスキを祭る社もあることは、栃木県と同様鉄器の流入に関係があるように思われる。このルートは、弥生時代後期に丹後に多くの鉄器製造基地が開かれた後、重量物である鉄を、鉄の欠乏していた畿内方面に運ぶために利用されたのではないか。”

【解説】
加西市とその周辺には、非常に多くの溜池がありますが、これも宗像族の水理土木技術との関連を指摘してます。
丹波といえば、古代の鉄の一大産地ですが、この氷上回廊を通って播磨に出て、そこから畿内に運ばれた、というのはもっともな説です。いうなれば「アイアン・ロード」といったところでしょうか。

中国地方宗像神伝播ルート
”加古川河口付近に厳島系の神社が多いのには、安芸の厳島神社の影響もあると思われる。これに続く神戸市に、三女神それぞれを単独で別社に祭る三社があるのが注目される。その一つ、タギツを祭る三宮神社神戸三宮の名になっている。”

【解説】
加古川と安芸の厳島神社との関係です。同じ瀬戸内海ですから、当然交流があったことでしょう。
ここで三宮が出てきました。三宮とは、
生田神社の八柱の裔神を祀った一宮から八宮までの神社(生田裔神八社)の中の三柱目に当たり、祭神としては湍津姫命(たきつひめのみこと)を祀っている。 航海の安全と商工業の繁栄を守る神として、古くから一般の崇敬厚い神社。古い記録がなく、いつ創設されたかなどについては未詳。
生田裔神八社(いくたえいしんはちしゃ)とは、兵庫県神戸市の生田神社を囲むように点在している裔神八社のことである。
祀られているのは、日本神話のアマテラスとスサノオの誓約の段で産まれた三女神五男神とされているが、七宮神社のみ全く関係のない祭神となっている。さらに、活津日子根命(イクツヒコネ)はどこにも祀られていない。 ”(Wikipediaより)


創建については不明ですが、生田神社は「日本書紀」に、神功皇后の三韓外征の帰途立ち寄り祭った地、と記録されてます。それが起源なのかは判然としませんが、いずれにしろ「航海の安全と商工業の繁栄を守る神」ですから、かなり古い時代に創建されたと考えてよいと思われます。

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プロフィール

青松光晴

Author:青松光晴
古代史研究家。理工系出身のビジネスマンとして一般企業に勤務する傍ら、古代史に関する情報を多方面から収集、独自の科学的アプローチにて、古代史の謎を解明中。特技は中国拳法。その他、現在はまっている趣味は、ハーブを栽培して料理をつくることです。
著書です。

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