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北部九州の宗像神と関連神を祭る神社データは語る(4)~「オカミベルト」と「埴安ベルト」

次に、オカミ神と埴安神の分布です。この両神は、はっきりとした棲み分けの関係にあります。

オカミ神は、宗像郡から始まり、国東半島および直入郡に到る連続した「オカミベルト」を示している。特に遠賀郡から宇佐郡に到る地域の分布が濃厚で、豊前地方に信仰の中心があるように見える。”
一方埴安神は、糸島半島から上座郡に到る連続した「埴安ベルト」を形成している。分布の中心は、那珂郡から夜須郡の辺りにあるとみられる。このベルトは、オカミベルトと接していて、ほとんど重複しない。唯一の例外は、両社が5%以上祭られる旧嘉麻郡である。”


埴安神・オカミ神を祭る神社分布  
【解説】
前回の宗像神と玉依姫の棲み分けと、似たような棲み分けになってます。すなわち、
宗像神の分布≒オカミベルト
玉依姫の分布≒埴安ベルト

です。

この分布領域を「どこかで見たな」と思われた方は、私のブログをかなり熱心に読んでいただいている方と推察します。
そうです。埴安ベルトは、甕棺分布域と重なっているのです。
論文では、以下のように述べてます。

”以上のような明確な信仰圏の対立は、文化圏の対立を示していると思われる。このような筑前西部とそれ以東の文化の対立としては、弥生時代の甕棺葬文化圏とそれ以東の地域との隔絶が想起される。”
埴安神が佐賀県域と熊本圏域に殆ど祭られていないことを除けば、両者の分布はよく一致している。二つのベルトの境界領域の嘉麻郡で埴安神とオカミ神が共存するのも、立岩遺跡とその周辺に甕棺文化が割り込んでいることと対応している。先述の玉依姫信仰がこの地域に進出していることも、これに対応する。”
甕棺文化圏で埴安神が祭られていたのは、甕棺製作に当たって原料の土に特別の神威を感じ、土の神である埴安神を祭ったと考えれば理解できる。古代人が土器の原料である土に特別の呪術的意味を感じていたことは、神武東征伝説中の説話などに見ることができる。
かつて甕棺文化圏に属しない宗像以東は、弥生文化の後進地と見なされていたが、田熊石畑遺跡の再発見で、甕棺文化圏に比肩する繁栄を誇っていたことが明らかになった。宗像から始まるオカミベルトは、この地域が甕棺文化圏と異なる精神文化の伝統を持っていたことを示している。”


【解説】
埴安神は土の神様とされます。したがって土器とつながることは間違いないでしょうが、さらに解釈を広げれば、土は五穀豊穣の源ですから、稲作とも深いつながりがるのではないか、とも考えられます。
実際この地域一帯は、日本の水田稲作発祥の地域ですね。
それはさておき、甕棺分布を見てみましょう。

北部九州甕棺分布  
そしてこの領域は、以前「邪馬台国広域地域圏」としたものと重なります。
詳しくは
纏向遺跡は邪馬台国か?(14)~北部九州の「邪馬台国広域地域圏」
を参照ください。

邪馬台国広域地域圏 
この設定が正しいとすると、邪馬台国の人々は、土の神様である埴安神、神武天皇の母である玉依姫(と姉の豊玉姫)信仰していた、ということになります。
こうしたことから、邪馬台国は稲作、土器の先進地域であり、神武天皇と強いつながりがある、ということがわかります。

論文ではこれに続き、
”このように、弥生時代に起源を持つ精神文化の伝統が、祭神の継承を通じて、現代まで連綿と受け継がれてきたと考えられる。このことは、少なくとも北部九州においては、祭神分布とその解析が古代史を理解する上で重要な鍵になることを示したと言えよう。”
と述べてますが、まさにその通りですね。

古代史は文献も少なく、考古学的データも不足してます。こうしたなか、ともすると安易な推測・想像をしてしまいがちですが、まずはこうした地道なデータの積み重ねが大切だと考えます。

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テーマ : 歴史
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プロフィール

青松光晴

Author:青松光晴
古代史研究家。理工系出身のビジネスマンとして一般企業に勤務する傍ら、古代史に関する情報を多方面から収集、独自の科学的アプローチにて、古代史の謎を解明中。特技は中国拳法。その他、現在はまっている趣味は、ハーブを栽培して料理をつくることです。
著書です。



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