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宗像と宇佐の女神(13)~埴安ベルトと銅矛圏

さて埴安神は、筑前西部を中心とする地域に集中し、ほぼ甕棺文化圏と重なるわけですが、この「埴安ベルト」はほぼ筑後で止まっているように見えます。
では、甕棺文化圏より拡大した銅矛埋納文化圏にそれが引き継がれていないでしょうか?

なぜ矢田氏がこのことにこだわるかというと、矢田氏は、「邪馬台国=宇佐」説であり、博多湾岸から宇佐まで文化圏が続くことを、示したいからです。

”図12は、図10で埋納銅矛の集中する地域での埴安神の分布を見たものである。記紀で埴安神と同一神と読みとれる埴山神も併せて示した。北部九州以外では埴山神の比率が多くなる。”
埋納銅矛・埴安神分布



”この図を見ると、埴安神は少ないながら豊前にも祭られていて、豊後では大野郡を中心にかなりの数の神社に祭られている。これは埋納銅矛の分布とある程度重なる。そして海を渡って四国南部特に高知県西南部に多く、ここでも埋納銅矛の分布に重なる。高知県では東部に埴山神が分布し、埋納銅矛の分布と一部重なっている。”

【解説】
埴安神は、豊前から豊後にかけて祭られてあり、この分布は埋納銅矛の分布と重なってます。四国にも祭られており、ここも埋納銅矛の分布と重なってます。海人族の介在を推測させますが、ここでひとつ注目したいのは、高知県西南部です。足摺岬の根元あたりの地域で、多く祭られているのがわかります。
だいぶ前に、魏志倭人伝に侏儒国という国が出てくる、という話を紹介しました。この場所を私は、足摺岬あたりと推測しました。
謎の国々は実在したか?(1) ~ 侏儒国(こびとの国)とは?

これははたして偶然の一致でしょうか?
銅矛圏=埴安神信仰圏=邪馬台国支配領域
ならば、一致していても、何ら不思議はないですね。

”銅矛埋納の分布を全体としてみると、筑前西部と筑後平野北西部にかけてのコアの地域は中広から広形まで出土するが、そこからの拡散の段階では中広がまず面的に拡がり、広形になるとその周辺をフロンティア的に縁取るように見える。埋納の目的が、農業共同体の祭祀から他文化圏との境界での勢力圏を示す呪術的な意味に変化していったのではないか。

【解説】
広形埋納銅矛の分布が、周辺にフロンティア的に縁取っているように見えることから、埋納の目的が他文化圏との境界を示す呪術的な意味に変化していったのではないか、という指摘は興味深いですね。
似た話として、なぜ銅鐸は埋納されたのか、の理由はよくわかっておらず、他勢力との境界に埋めたのではないか、という説がある話を以前しました。
銅鐸にみる「西→東」への権力移動 (8) ~ 銅鐸「埋納」の謎

銅鐸圏と銅矛圏は対峙していたでしょうから、お互いにその境界に埋納した、というのも想定できる話です。

”福永伸哉は、この時期の銅矛文化圏と銅鐸文化圏のせめぎ合いは、当時瀬戸内海を通る交易ルートが機能していなかったため、畿内の勢力が鉄などの輸入のため太平洋ルートの開拓を狙って四国に進出したためと考えている。古墳時代に入り瀬戸内ルートの大動脈が開通すると太平洋ルートの構築の必要性が失われ、同時にいずれの青銅器祭祀文化も衰退化することになった。既報で触れたように、瀬戸内ルートの開通には沖ノ島祭祀開始との相関が考えられる。”

【解説】
銅矛文化圏と銅鐸文化圏のせめぎ合いの話を、鉄の供給ルートの関係ではないか、と推測してます。一見もっともらしい説ですが、畿内に鉄が本格供給されたのは3世紀後半以降であり、一方銅鐸は3世紀には突然作られなくなるわけで、時代が合わない気がします。

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青松光晴

Author:青松光晴
古代史研究家。理工系出身のビジネスマンとして一般企業に勤務する傍ら、古代史に関する情報を多方面から収集、独自の科学的アプローチにて、古代史の謎を解明中。特技は中国拳法。その他、現在はまっている趣味は、ハーブを栽培して料理をつくることです。
著書です。



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