日本神話の源流(17)~ギリシア・スキュタイとの比較
前回紹介した神話のなかに、興味を引く描写があります。
”(バウボは)ハーデースにペルセポネーをさらわれたのを怒って神界を捨てたデメーテルがエレウシスに来たおり,自宅に迎え供応しようとするが,女神が悲しみのあまり何も口にしないのを見ると,衣をまくり上げて恥部をむき出してみせて失笑させ,ついに断食を破らせたという。” (ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「バウボ」)
どこかで聞いたことがある話ですね。
そうです、天岩戸神話のなかで、天岩戸に隠れたアマテラスをアメノウズメが卑猥な踊りをして、引き出す場面と、とてもよく似ています。
詳しくはこちらをお読みください。
「日本神話の源流(14)~東南アジアとの比較 日食」
吉田氏は、
"男神の乱暴な行為によって深く傷つけられ、憤慨のあまり神々のあいだから姿を隠し、宇宙の秩序を維持するために肝要なその役割を果たすことを止めてしまって、世界を混乱状態に陥れた大女神をなだめるために、女性が滑稽な仕方で性器を露出し、笑いを誘発しているという、かなり奇異なものであるその内容において、明らかに、バウボによる性器呈示を物語るギリシア神話と一致しているといえる”(同書P145)
と述べてます。
さらにアルカディア地方には、同地で行われた密議の縁起譚として、次のような伝承があります。
"デメテルはあるとき、アルカディア地方を通りかかったおりに、彼女に情欲を燃やしたポセイドンによって、後をつけられているのに気づいた。彼女はそこで、とっさに一頭の牝馬に姿を変えて、付近で草を食んでいる馬の群れの中に混じり、ポセイドンの目をくらまそうとした。
しかしポセイドンは、女神の変身を目ざとく見破り、自身もすかさず牝馬の形をとると、牝馬になったデメテルを捕らえて、むりやりに情欲を遂げた。
この交わりの結果デメテルは、秘儀にあずからぬ者には名を明かすことのできぬ大女神と、アレイトンと呼ばれる一頭の馬を生んだ。
この事件の後、デメテルはポセイドンの理不尽な行為に憤って、黒衣に身を包み、山中の洞穴の中に閉じこもって、作物を生育させる大地女神としての機能を果たすことをやめ、世界を飢饉に陥れた。困惑したゼウスは、最後に運命の女神のモイライをこの隠所に派遣して説得にあたらせ、ようやくデメテルを洞穴から出させることができた。”(同書P146)
吉田氏はこの話とアマテラス神話との比較を詳細に述べてますが、表にまとめます。
いかがでしょうか。細かい描写まで、よく似ています。
ここから
”内陸アジアの馬匹飼育遊牧民によって、神話が西から東に運ばれたためであろう。”
という大林太良氏のかつての説を引用して、
”今日では基本的に正しいものとなっている。”と述べてます。
たしかにこれだけ似ていれば、そのような推測も成立しそうですが、はたしてそのように結論づけていいのかどうか、疑問も残ります。
それはのちほどということにして、先に進みましょう。
↓ 新著です。よろしくお願い申し上げます!!
”(バウボは)ハーデースにペルセポネーをさらわれたのを怒って神界を捨てたデメーテルがエレウシスに来たおり,自宅に迎え供応しようとするが,女神が悲しみのあまり何も口にしないのを見ると,衣をまくり上げて恥部をむき出してみせて失笑させ,ついに断食を破らせたという。” (ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「バウボ」)
どこかで聞いたことがある話ですね。
そうです、天岩戸神話のなかで、天岩戸に隠れたアマテラスをアメノウズメが卑猥な踊りをして、引き出す場面と、とてもよく似ています。
詳しくはこちらをお読みください。
「日本神話の源流(14)~東南アジアとの比較 日食」
吉田氏は、
"男神の乱暴な行為によって深く傷つけられ、憤慨のあまり神々のあいだから姿を隠し、宇宙の秩序を維持するために肝要なその役割を果たすことを止めてしまって、世界を混乱状態に陥れた大女神をなだめるために、女性が滑稽な仕方で性器を露出し、笑いを誘発しているという、かなり奇異なものであるその内容において、明らかに、バウボによる性器呈示を物語るギリシア神話と一致しているといえる”(同書P145)
と述べてます。
さらにアルカディア地方には、同地で行われた密議の縁起譚として、次のような伝承があります。
"デメテルはあるとき、アルカディア地方を通りかかったおりに、彼女に情欲を燃やしたポセイドンによって、後をつけられているのに気づいた。彼女はそこで、とっさに一頭の牝馬に姿を変えて、付近で草を食んでいる馬の群れの中に混じり、ポセイドンの目をくらまそうとした。
しかしポセイドンは、女神の変身を目ざとく見破り、自身もすかさず牝馬の形をとると、牝馬になったデメテルを捕らえて、むりやりに情欲を遂げた。
この交わりの結果デメテルは、秘儀にあずからぬ者には名を明かすことのできぬ大女神と、アレイトンと呼ばれる一頭の馬を生んだ。
この事件の後、デメテルはポセイドンの理不尽な行為に憤って、黒衣に身を包み、山中の洞穴の中に閉じこもって、作物を生育させる大地女神としての機能を果たすことをやめ、世界を飢饉に陥れた。困惑したゼウスは、最後に運命の女神のモイライをこの隠所に派遣して説得にあたらせ、ようやくデメテルを洞穴から出させることができた。”(同書P146)
吉田氏はこの話とアマテラス神話との比較を詳細に述べてますが、表にまとめます。

いかがでしょうか。細かい描写まで、よく似ています。
ここから
”内陸アジアの馬匹飼育遊牧民によって、神話が西から東に運ばれたためであろう。”
という大林太良氏のかつての説を引用して、
”今日では基本的に正しいものとなっている。”と述べてます。
たしかにこれだけ似ていれば、そのような推測も成立しそうですが、はたしてそのように結論づけていいのかどうか、疑問も残ります。
それはのちほどということにして、先に進みましょう。
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