日本神話の源流(20)~ナルト抒情詩とスキュタイ神話
ナルト抒情詩ですが、吉田氏はそこに、ギリシア神話の痕跡がある、と指摘してます。
前回取り上げたゼラセは、夫の死後双児の兄弟ウリュズメグとヘミュツを生んだあと、実はもう一人、娘を生んでます。この娘は抒情詩全体のなかで中心的な役割を演じることになるサタナですが、彼女の誕生の顛末は、すこぶる奇異なものです。
あらすじは次のとおりです。
・夫のエクセルテグとその兄のエクセルの二人を失ったゼラセは、悲嘆に暮れ、亡骸をどのようにして墓に埋めようか悩んでいた。
・そこにかねてからゼラセに目をつけていたワステュルジュがやってきて、自分と結婚するなら埋葬してあげよう言った。
・ゼラセが承諾すると、ワスチュルジュはまたたくまに埋葬して立派な墓を建てたが、ゼラセは身を清めてくると言って、海に行き、海底の父の館に戻ってしまった。
・ゼラセは二人の息子とともに陸上で暮らしたが、亡くなり埋葬された。
・ワスチュルジュがやってきて、墓のなかに入り込み凌辱したのち、愛馬にも犯させた。
・1年後に女児と馬が生まれ、ウリュズベグによって取り出されて養育された。
・女児は絶世の美女サタナとなり、馬は名馬となった。
・サタナは、しぶる兄ウリュズベグを説得して、彼と結婚した。
この話について、
"サタナとその母親ゼラセは、ともにイラン系遊牧民に崇敬されていた水界と結びつきの深い大女神が、抒情詩伝説の中で半神的女性(あるいは女帝)に変化したものとみられる。”(P179)
と述べてます。
また、
”ゼラセが墓の中でワステュルジとその馬によって次々に犯され、その結果、彼女から双児の子としてサタナと馬が生まれるという話は、デメテルとポセイドンを主人公とするギリシア神話、およびアマテラスとスサノオを主人公とする日本神話の双方と、明らかに似ている。”
”女神的存在が、乱暴者の男神的神と馬に犯され、子として女神的存在と馬が生まれている点で、ギリシア神話といちじるしく近似している。”(P180)
と指摘してます。
ここでナルト抒情詩、ギリシア神話、日本神話を比較してます。
アマテラスとスサノオは、誓約を行った結果、5男3女が生まれました。誓約が何を意味するのか、さまざまな解釈がされてます。中には、アマテラスがスサノオに乱暴されたことをほのめかしている、という説もありますが、何とも言えません。
またアマテラスとスサノオは、イザナギとイザナミから生まれた姉と弟の関係であり、デメテルとポセイドンも同様ですが、ワステュルジとゼラセは、異なります。
できた子供も、ナルト抒情詩とギリシア神話は、娘と馬で同じですが、日本神話は5男3女で異なります。
このように必ずしもすべてが類似しているとはいえませんが、モチーフとしては類似しているとはいえましょう。
こうした類似性から吉田氏は、ギリシア神話がアジアステップ地帯のイラン系遊牧民に伝わり、それが日本に伝わった、と考えているようです。
いちおうもっともな仮説に聞こえますが、どうでしょうか?。
詳細にみていくと、そうとはいえないところがあります。
たとえば、今の物語でいえば、ギリシア神話と日本神話は、姉と弟の関係ですが、ナルト神話は異なります。「ギリシア⇒ステップ地帯⇒日本」と伝わったのであれば、途中のステップ地帯も、同じように姉と弟の関係として残るのが自然です。
また、できた子供がギリシア神話とナルト神話の「娘と馬」に対して、日本神話では「5男3女」であり、これが伝搬に伴って変化した結果といえるのか、という疑問もあります。
このように課題は残るのですが、これだけではすぐに結論が出るものでもないので、次に進みます。
↓ 新著です。よろしくお願い申し上げます!!
前回取り上げたゼラセは、夫の死後双児の兄弟ウリュズメグとヘミュツを生んだあと、実はもう一人、娘を生んでます。この娘は抒情詩全体のなかで中心的な役割を演じることになるサタナですが、彼女の誕生の顛末は、すこぶる奇異なものです。
あらすじは次のとおりです。
・夫のエクセルテグとその兄のエクセルの二人を失ったゼラセは、悲嘆に暮れ、亡骸をどのようにして墓に埋めようか悩んでいた。
・そこにかねてからゼラセに目をつけていたワステュルジュがやってきて、自分と結婚するなら埋葬してあげよう言った。
・ゼラセが承諾すると、ワスチュルジュはまたたくまに埋葬して立派な墓を建てたが、ゼラセは身を清めてくると言って、海に行き、海底の父の館に戻ってしまった。
・ゼラセは二人の息子とともに陸上で暮らしたが、亡くなり埋葬された。
・ワスチュルジュがやってきて、墓のなかに入り込み凌辱したのち、愛馬にも犯させた。
・1年後に女児と馬が生まれ、ウリュズベグによって取り出されて養育された。
・女児は絶世の美女サタナとなり、馬は名馬となった。
・サタナは、しぶる兄ウリュズベグを説得して、彼と結婚した。
この話について、
"サタナとその母親ゼラセは、ともにイラン系遊牧民に崇敬されていた水界と結びつきの深い大女神が、抒情詩伝説の中で半神的女性(あるいは女帝)に変化したものとみられる。”(P179)
と述べてます。
また、
”ゼラセが墓の中でワステュルジとその馬によって次々に犯され、その結果、彼女から双児の子としてサタナと馬が生まれるという話は、デメテルとポセイドンを主人公とするギリシア神話、およびアマテラスとスサノオを主人公とする日本神話の双方と、明らかに似ている。”
”女神的存在が、乱暴者の男神的神と馬に犯され、子として女神的存在と馬が生まれている点で、ギリシア神話といちじるしく近似している。”(P180)
と指摘してます。
ここでナルト抒情詩、ギリシア神話、日本神話を比較してます。
アマテラスとスサノオは、誓約を行った結果、5男3女が生まれました。誓約が何を意味するのか、さまざまな解釈がされてます。中には、アマテラスがスサノオに乱暴されたことをほのめかしている、という説もありますが、何とも言えません。
またアマテラスとスサノオは、イザナギとイザナミから生まれた姉と弟の関係であり、デメテルとポセイドンも同様ですが、ワステュルジとゼラセは、異なります。
できた子供も、ナルト抒情詩とギリシア神話は、娘と馬で同じですが、日本神話は5男3女で異なります。
このように必ずしもすべてが類似しているとはいえませんが、モチーフとしては類似しているとはいえましょう。

こうした類似性から吉田氏は、ギリシア神話がアジアステップ地帯のイラン系遊牧民に伝わり、それが日本に伝わった、と考えているようです。
いちおうもっともな仮説に聞こえますが、どうでしょうか?。
詳細にみていくと、そうとはいえないところがあります。
たとえば、今の物語でいえば、ギリシア神話と日本神話は、姉と弟の関係ですが、ナルト神話は異なります。「ギリシア⇒ステップ地帯⇒日本」と伝わったのであれば、途中のステップ地帯も、同じように姉と弟の関係として残るのが自然です。
また、できた子供がギリシア神話とナルト神話の「娘と馬」に対して、日本神話では「5男3女」であり、これが伝搬に伴って変化した結果といえるのか、という疑問もあります。
このように課題は残るのですが、これだけではすぐに結論が出るものでもないので、次に進みます。
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