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日本神話の源流(23)~朝鮮半島神話との関係 母神伝説

高句麗建国伝説が、日本建国伝説やナルト抒情詩と似ているという話でしたが、吉田氏は、ほかにも似ている点を挙げてます。

朱蒙が高句麗建国のために出発してからの話です。

・朱蒙が扶余の国を去り、高句麗建国に出発しようとしたとき、母の柳花から、五穀の種子を包んだ包みを渡されたが、持ち忘れて旅立ってしまった。
・旅の途中休息していると、二羽の鳩が飛んできたので、「母の女神が私に麦の種子を送らせたのに違いない」といって、弓で射落とした。
・鳩ののどを開くと、麦の種子が見つかった。
鳩に水を吹きかけると、二羽とも蘇生し、元気に飛び去った。

この話がナルト抒情詩の、デメテルがトリプトレモスに麦の種子を授けたという話と似ている、と指摘してます(同書P151)。
あらすじは以下のとおりです。

”デメテルは、エレシウスの伝承によれば、彼女を館に滞在させ親切にもてなしたケレオス王の子の一人、トリプトレモスに特別の愛情をそそぎ、わが子のようにいつくしみ育てたうえに、彼を有翼の竜の引く車に乗せ、麦の種子を持たせて、空から世界に農業を広めてまわらせた。”

さらに、日本神話の天孫降臨の際の、
アマテラスが、愛児のニニギノミコト稲穂を授けて地上の支配者として降臨させた”という話と似ているとしてます。

高句麗建国伝説には鳩が出てきますが、ナルト抒情詩にも鳩が登場します。

出てくるところは、
三羽の鳩になったゼラセが、エクセルテグの矢によって射落とされ、その後エクセルテグによって、自分の傷から出た血をふりかけられ、瀕死の状態から蘇生した。”
という話です。
どちらも、鳩に液体(水、血)を吹きかけると蘇生した、という話で、似てますね。

ところで、”柳花は、高句麗の「祖母神」として、水辺の洞窟に奉祀されていた”とのことです。
このことについて、
”後代の民間信仰において、観音の聖所とされる岩屋という形に変化しながら、連綿として持続している。襄陽(じょうよう)の五峰山洛山寺(ごほうざんらくほうじ)の東方にある「観音大士所住の処」と信じられた海辺の岩窟がある。この岩屋の前にきて、至誠をもって礼拝する者には、青鳥(=鳩)の出現がみられた。
としてます。

これに対して、ギリシアのアルカディアのデメテル神話にも似たような話がある、と述べてます。 

”デメテルがポセイドンに犯されたあとで怒って身を隠したといわれる洞穴は、デメテルの聖所とされる。その奥には怒りの形相をとった女神をあらわした木彫の像が祭られていた。その像は、身体は人間の女性の姿をしていたが、頭は馬形で、その頭からさらに蛇や、その他の野獣の像が生えだしていた。そして片手に海豚(いるか)、もう一方の手には鳩を持っていたという。”

日本建国伝説でも、アマテラスがスサノオの乱暴に怒って、天岩戸に身を隠したという話がありますね。

ここまでで、穀物の種子をわたす、鳩、岩窟といったキーワードが出てきましたので、整理します。

ギリシア・ナルト・高句麗・日本神話比較

たしかに総論としてどの地域の神話も似ているとはいえます。
一方で細かくみると、高句麗建国伝説では3つすべての要素があるのに対して、ギリシア神話は「鳩」と「岩窟」、ナルト抒情詩は「穀物の種子をもたせる」と「鳩」、日本建国伝説では「穀物の種子をもたせる」と「岩窟」のそれぞれ2つの要素だけ、と違いがあります。

したがってこの話だけをもって、神話の伝播を単純に、
ギリシア→中央アジアステップ地帯→朝鮮半島→日本
と説明していいのだろうか、という疑問も湧きます。

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青松光晴

Author:青松光晴
古代史研究家。理工系出身のビジネスマンとして一般企業に勤務する傍ら、古代史に関する情報を多方面から収集、独自の科学的アプローチにて、古代史の謎を解明中。特技は中国拳法。その他、現在はまっている趣味は、ハーブを栽培して料理をつくることです。
著書です。



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