日本神話の源流(28)~「世界神話」は存在したか?
前回まで、吉田氏の「日本神話の源流」を題材にして、日本神話がいつ、どこから伝搬したのか、をみてきました。
同書は、世界中のさまざまな神話を元に、深い考察をしています。しかしながら、世界中に似たような神話があり、しかもそれが遠く離れた地域に残っていることなど、氏の説だけでは説明しきれない要素も多々あることも、お話しました。
ではそれをどのように解釈すればいいのか、それがこれからのテーマです。
このようななか、私は一つの仮説を描いていました。それは、
”人類がアフリカから出て、世界中に広がっていった、ということであるなら、彼らはもともと神話をもっていて、それが世界中に広まったのではないか。そしてそれが世界中に広まるうちに、次第に変化発展していったのでがないか。”
というものです。
もちろんその後、各地域で形成されていった神話が、吉田氏が主張しているように、その他の地域に伝搬して影響を与えたこともあったことでしょう。しかしながら、それ以前に元となる神話があったのではないか、と考えたのです。
もしこの仮説どおりであるならば、遠く離れた地域に、似たような神話がある理由も説明できます。
実は近年、比較神話学の世界でこのような説が提唱されているようなので、まずはそれをみていきましょう。「神話学:比較神話学の現状と展望」(松村一男)からです。
要旨としては、出アフリカ以前から神話をもっていた可能性、出アフリカ以降も共通の神話を保持しつづけたという可能性があり、それを再建しようとするもので、それを「世界神話」と呼んでいます。
いくつかの説を挙げてますが、私の考えにもっとも近い、マイケル・ヴィツル氏(ハーバード大学サンスクリッドおよびインド学教授)の説を紹介します。
ヴィツル氏は、世界の神話を、次の4つに分類してます。
1.パン・ガイア神話
アフリカで誕生した現生人類が保持していたと考えられる最古の神話
2.出アフリカ神話
紅海を渡ってアフリカを出て、アラビア半島からインドに到着した段階で現生人類が保持していたと考えられる神話
3.ゴンドワナ神話
その中から比較的早い時期にユーラシアの沿岸を移動してパプア・ニューギニアやオーストラリアに到達した人類が、現在のサハラ以南のアフリカと共通して示す特徴的な神話
4.ローラシア神話
インドから向かう流れを、さらに3つに分類してます。
(1)東に向かって東南アジア、中国、日本、シベリア、北米、中米、南米に向かう流れ
(2)ユーラシア内陸に向かう流れ
(3)西に向かってレバント(シリア・レバノン・ヨルダン・イスラエル)、ヨーロッパそして一部は北アフリカにも向かった流れ
の神話です。
図で示すと、以下のイメージになります。
以上を、遺伝子学からみた人類の拡散との関係でみてみます。
下が、人類拡散図で、上の4つの神話地域を加筆しました。
70,000~60,000万年前にアフリカを出て、アラビア半島・インドに到着します。ここでの神話が出アフリカ神話です。
47,000年前には、東南アジアからニューギニア・オーストラリアに達します。ここでの神話が、ゴンドワナ神話です。
ローラシア神話のグループは、これ以降の時代で、大きく3つのグループに分けられます。
(1)ニューギニア・オーストラリアに渡る途中、アジア大陸東を北上して、中国・日本列島・シベリアへ達したグループで、40,000~25000年前になります。一部はアラスカを通過して、北米・南米まで達します。
また、中国南部から南下して、フィリッピン、ニューギニア、ポリネシアに渡った人々もいました。時代は新しく、3,000年前と考えられてます。
(2)インド付近から北上して、中央アジアステップ地帯に行ったグループです。
(3)地中海東岸を通過して、ヨーロッパまで達したグループです。40,000年前のことです。
なお、人類拡散の時期とルートについては、まだ正確なことがわかっておらず、日々、新しい説が出てきてます。今回紹介した説は、そのうちの一つに過ぎません。
ヴィツル氏は、おそらくこれに近い説を採用して、神話の伝播ルートを推測したものと考えられます。
日本列島へは、中国江南地方(揚子江下流域)・朝鮮半島・サハリンの3つのルートから入った、と推測しています。
これも諸説ありますが、長い年月をかけ、少しづつ入ってきたと考えられます。
日本列島には、4万年前に渡ってきた人々がいることが、考古学的に確実とされてます。そのルートですが、私は、南方からの渡来、具体的には東南アジアにあったスンダランドから、アジア大陸東南沿岸を北上して、台湾~沖縄~日本本土、とやってきたと、推測してます。
↓ 新著です。よろしくお願い申し上げます!!
同書は、世界中のさまざまな神話を元に、深い考察をしています。しかしながら、世界中に似たような神話があり、しかもそれが遠く離れた地域に残っていることなど、氏の説だけでは説明しきれない要素も多々あることも、お話しました。
ではそれをどのように解釈すればいいのか、それがこれからのテーマです。
このようななか、私は一つの仮説を描いていました。それは、
”人類がアフリカから出て、世界中に広がっていった、ということであるなら、彼らはもともと神話をもっていて、それが世界中に広まったのではないか。そしてそれが世界中に広まるうちに、次第に変化発展していったのでがないか。”
というものです。
もちろんその後、各地域で形成されていった神話が、吉田氏が主張しているように、その他の地域に伝搬して影響を与えたこともあったことでしょう。しかしながら、それ以前に元となる神話があったのではないか、と考えたのです。
もしこの仮説どおりであるならば、遠く離れた地域に、似たような神話がある理由も説明できます。
実は近年、比較神話学の世界でこのような説が提唱されているようなので、まずはそれをみていきましょう。「神話学:比較神話学の現状と展望」(松村一男)からです。
要旨としては、出アフリカ以前から神話をもっていた可能性、出アフリカ以降も共通の神話を保持しつづけたという可能性があり、それを再建しようとするもので、それを「世界神話」と呼んでいます。
いくつかの説を挙げてますが、私の考えにもっとも近い、マイケル・ヴィツル氏(ハーバード大学サンスクリッドおよびインド学教授)の説を紹介します。
ヴィツル氏は、世界の神話を、次の4つに分類してます。
1.パン・ガイア神話
アフリカで誕生した現生人類が保持していたと考えられる最古の神話
2.出アフリカ神話
紅海を渡ってアフリカを出て、アラビア半島からインドに到着した段階で現生人類が保持していたと考えられる神話
3.ゴンドワナ神話
その中から比較的早い時期にユーラシアの沿岸を移動してパプア・ニューギニアやオーストラリアに到達した人類が、現在のサハラ以南のアフリカと共通して示す特徴的な神話
4.ローラシア神話
インドから向かう流れを、さらに3つに分類してます。
(1)東に向かって東南アジア、中国、日本、シベリア、北米、中米、南米に向かう流れ
(2)ユーラシア内陸に向かう流れ
(3)西に向かってレバント(シリア・レバノン・ヨルダン・イスラエル)、ヨーロッパそして一部は北アフリカにも向かった流れ
の神話です。
図で示すと、以下のイメージになります。

以上を、遺伝子学からみた人類の拡散との関係でみてみます。
下が、人類拡散図で、上の4つの神話地域を加筆しました。

70,000~60,000万年前にアフリカを出て、アラビア半島・インドに到着します。ここでの神話が出アフリカ神話です。
47,000年前には、東南アジアからニューギニア・オーストラリアに達します。ここでの神話が、ゴンドワナ神話です。
ローラシア神話のグループは、これ以降の時代で、大きく3つのグループに分けられます。
(1)ニューギニア・オーストラリアに渡る途中、アジア大陸東を北上して、中国・日本列島・シベリアへ達したグループで、40,000~25000年前になります。一部はアラスカを通過して、北米・南米まで達します。
また、中国南部から南下して、フィリッピン、ニューギニア、ポリネシアに渡った人々もいました。時代は新しく、3,000年前と考えられてます。
(2)インド付近から北上して、中央アジアステップ地帯に行ったグループです。
(3)地中海東岸を通過して、ヨーロッパまで達したグループです。40,000年前のことです。
なお、人類拡散の時期とルートについては、まだ正確なことがわかっておらず、日々、新しい説が出てきてます。今回紹介した説は、そのうちの一つに過ぎません。
ヴィツル氏は、おそらくこれに近い説を採用して、神話の伝播ルートを推測したものと考えられます。
日本列島へは、中国江南地方(揚子江下流域)・朝鮮半島・サハリンの3つのルートから入った、と推測しています。
これも諸説ありますが、長い年月をかけ、少しづつ入ってきたと考えられます。
日本列島には、4万年前に渡ってきた人々がいることが、考古学的に確実とされてます。そのルートですが、私は、南方からの渡来、具体的には東南アジアにあったスンダランドから、アジア大陸東南沿岸を北上して、台湾~沖縄~日本本土、とやってきたと、推測してます。
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