古事記・日本書紀のなかの史実 (6)~「ゴンドワナ型神話」と「ローラシア型神話」
前回までのところで、皆さんのなかには、
「冒頭からずいぶんと細かい話をしているな。こんな小さいことは、どうでもいいじゃないか。」とお感じ方もおられると思います。
ではなぜここまで冒頭の部分すなわち「天地開闢(てんちかいびゃく)」にこだわったかというと、前のシリーズでお話した「日本神話の成り立ち」に関係するからです。
概略はこうでした。
世界の神話には、大きく分けて、「ゴンドワナ型神話」と「ローラシア型神話」の2つがある。
人類の祖先がアフリカを出て(10万年前?)、アラビア半島からインド西にやってきた。彼らはさらに東に進み、東南アジアにあったスンダランド、さらにはメラネシアやオーストラリアに到達した(5~6万年前?)。彼らがもっていた神話が、「ゴンドワナ型神話」です。
一方、アラビア半島からインド西に残った人々のうち、やや遅れて移動した人々がいました。彼らは北上して中央アジアステップ地帯やヨーロッパ、また東へ進み東アジア、さらにはアメリカ大陸へと到達しました。彼らがもっていた神話が「ローラシア型神話」です。
詳細は、
日本神話の源流(35)~世界神話伝播ルートを推測する
を参照ください。
どちらの神話も、日本列島に伝播しました。したがって日本神話は、2つの神話がベースになっていると考えます。
おおまかにいえば、古い時代の神話、たとえば「国生み」「農業の起源(オオゲツヒメ神話)」などは「ゴンドワナ型神話」の影響が濃く、新しい時代の神話、たとえば「天岩戸」「天孫降臨」神話などは「ローラシア型神話」の影響が強いと推測している、という話しをしました。
この表では、天地開闢については取り上げませんでしたが、さらに古い時代に関する神話ですから、流れからいくと「ゴンドワナ型神話」ということになります。
ところで「ゴンドワナ型神話」と「ローラシア型神話」には、大きな差があります。
「ローラシア型神話」には創造神話がありますが、「ゴンドワナ型神話」にはない、というものです。つまり「ゴンドワナ型神話」では、すでに存在する世界に人類が出現する形です。
「ローラシア型神話」の典型である聖書には、天地創造がありますね。しかもその天地は、全知全能の神が造ったとしてます。
「ローラシア型神話」では、必ずしもすべて神が天地を造ったというわけではありませんが、キーワードがあります。
それは、「渾沌」「原初水」「洪水神話と漂える大地」「宇宙卵」「世界巨人」「世界雄牛」です。
古事記には、
国稚く浮脂(うきあぶら)の如くして、くらげのなすただよえる時に、葦牙(あしかび)の如萌え謄(あが)る物に因りて
とあり、これが、「原初水」を表しているともいえますが、微妙なところです。
一方の日本書紀には、
天と地が分かれず、陰と陽とが分かれていなかったとき、渾沌として形の定まらないことは鶏卵の中身のごとくであり、
渾沌、卵というキーワードがあり、ローラシア型神話の典型的な天地創造であるといえます。
以上まとめると、天地開闢については、
・古事記は「ローラシア型神話」の特徴を含んでいるともいえるが、「ゴンドワナ型神話」に近い。
・日本書紀は、明らかに「ローラシア型神話」である。
つまり、古事記のほうが、日本書紀より古い伝承を伝えていることになります。
これは内容からもいえます。
古事記は、素朴な描写に対して、日本書紀には中国の深遠な陰陽説が明確に反映されてます。古事記の神話の原型となるものがどこかの地域にあり、その原型が中国に伝わり発展したとも考えられます。
また、古事記は古来からの伝承を記載したのに対して、日本書紀は中国史書や思想を取り入れたとされてます。となると、日本書紀は、古事記の伝える古来からの素朴な伝承に、中国思想を加味して編纂したということになりますね。
↓ 新著です。よろしくお願い申し上げます!!
「冒頭からずいぶんと細かい話をしているな。こんな小さいことは、どうでもいいじゃないか。」とお感じ方もおられると思います。
ではなぜここまで冒頭の部分すなわち「天地開闢(てんちかいびゃく)」にこだわったかというと、前のシリーズでお話した「日本神話の成り立ち」に関係するからです。
概略はこうでした。
世界の神話には、大きく分けて、「ゴンドワナ型神話」と「ローラシア型神話」の2つがある。
人類の祖先がアフリカを出て(10万年前?)、アラビア半島からインド西にやってきた。彼らはさらに東に進み、東南アジアにあったスンダランド、さらにはメラネシアやオーストラリアに到達した(5~6万年前?)。彼らがもっていた神話が、「ゴンドワナ型神話」です。
一方、アラビア半島からインド西に残った人々のうち、やや遅れて移動した人々がいました。彼らは北上して中央アジアステップ地帯やヨーロッパ、また東へ進み東アジア、さらにはアメリカ大陸へと到達しました。彼らがもっていた神話が「ローラシア型神話」です。
詳細は、
日本神話の源流(35)~世界神話伝播ルートを推測する
を参照ください。
どちらの神話も、日本列島に伝播しました。したがって日本神話は、2つの神話がベースになっていると考えます。
おおまかにいえば、古い時代の神話、たとえば「国生み」「農業の起源(オオゲツヒメ神話)」などは「ゴンドワナ型神話」の影響が濃く、新しい時代の神話、たとえば「天岩戸」「天孫降臨」神話などは「ローラシア型神話」の影響が強いと推測している、という話しをしました。

この表では、天地開闢については取り上げませんでしたが、さらに古い時代に関する神話ですから、流れからいくと「ゴンドワナ型神話」ということになります。
ところで「ゴンドワナ型神話」と「ローラシア型神話」には、大きな差があります。
「ローラシア型神話」には創造神話がありますが、「ゴンドワナ型神話」にはない、というものです。つまり「ゴンドワナ型神話」では、すでに存在する世界に人類が出現する形です。
「ローラシア型神話」の典型である聖書には、天地創造がありますね。しかもその天地は、全知全能の神が造ったとしてます。
「ローラシア型神話」では、必ずしもすべて神が天地を造ったというわけではありませんが、キーワードがあります。
それは、「渾沌」「原初水」「洪水神話と漂える大地」「宇宙卵」「世界巨人」「世界雄牛」です。
古事記には、
国稚く浮脂(うきあぶら)の如くして、くらげのなすただよえる時に、葦牙(あしかび)の如萌え謄(あが)る物に因りて
とあり、これが、「原初水」を表しているともいえますが、微妙なところです。
一方の日本書紀には、
天と地が分かれず、陰と陽とが分かれていなかったとき、渾沌として形の定まらないことは鶏卵の中身のごとくであり、
渾沌、卵というキーワードがあり、ローラシア型神話の典型的な天地創造であるといえます。
以上まとめると、天地開闢については、
・古事記は「ローラシア型神話」の特徴を含んでいるともいえるが、「ゴンドワナ型神話」に近い。
・日本書紀は、明らかに「ローラシア型神話」である。
つまり、古事記のほうが、日本書紀より古い伝承を伝えていることになります。
これは内容からもいえます。
古事記は、素朴な描写に対して、日本書紀には中国の深遠な陰陽説が明確に反映されてます。古事記の神話の原型となるものがどこかの地域にあり、その原型が中国に伝わり発展したとも考えられます。
また、古事記は古来からの伝承を記載したのに対して、日本書紀は中国史書や思想を取り入れたとされてます。となると、日本書紀は、古事記の伝える古来からの素朴な伝承に、中国思想を加味して編纂したということになりますね。
↓ 新著です。よろしくお願い申し上げます!!
最後まで読んでくださり最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
↓なるほどと思ったら、クリックくださると幸いです。皆様の応援が、励みになります。
にほんブログ村
スポンサーサイト