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古事記・日本書紀のなかの史実 (8)~皇祖神はタカムスヒだった!?

前回は、天地開闢において、冒頭、古事記に登場する「アメノミナカヌシ」が、日本書紀本文冒頭には登場しない謎についてでした。

次の、タカムスヒについても同様で、古事記冒頭に登場するものの、日本書紀本文冒頭には登場しません。わずかに一書(第四)に記載されてるにすぎません。これも何らかの理由があったはずです。

古事記・日本書紀神代比較  


ところで私たちは、皇室の祖先というとアマテラス(天照大御神)を思い浮かべますが、近年では、タカムスヒがもともとの皇祖神であったというのが通説となってます。

代表的な著書である「アマテラスの誕生」(溝口睦子)をみてみましょう。

・4世紀までの日本(倭国)には、唯一絶対の権威をもつ至高神は存在しなかった。多神教的社会であった。
4世紀前半に力をつけてきた高句麗が南下して、5世紀初頭に朝鮮半島で戦いとなり、日本と激突し日本は敗れた。
・このころを境として、日本国内に大きな変革が起り、専制的な統一王権体制の基本となる政治思想の導入が必要とされた。
・もともとは北方ユーラシアの遊牧民がもっていた”天降った天の子を名乗って絶対的な権力を手中にした”という高句麗の「天孫降臨神話」を取り入れた。
・「天孫降臨神話」は、もともとはタカムスヒが主役であり、アマテラスが演じる伝承は、後発的なものである。

つまり、
・5世紀ころタカムスヒが至高神の神話が取り入れられた。
・8世紀になりアマテラスが至高神になり、タカムスヒの存在が消された、あるいは薄められた。

という解釈です。

はたしてこの説で、うまく説明できるでしょうか。

日本神話が、南方系のもの、中央アジアステップ地帯から朝鮮半島を経由したもの、東南アジア・中国から伝わったものなど、さまざまな地域から、長い年月を経て伝播して形成されたことは、前のシリーズでお話しました。

溝口氏の説も、この観点からいえば、共通する考え方です。

しかしながら、いくつか疑問が挙げられます。

<疑問1>
日本(倭国)にとり、高句麗は激戦で戦った相手国です。その憎むべき敵国の神話をやすやすと取り入れるだろうか、という素朴な疑問です。いってみれば、太平洋戦争で戦っていた最中に、欧米の神話を受け入れるようなものです。

太平洋戦争中は「鬼畜米英」などといって、欧米の思想を統制弾圧していた時代です。終戦後、欧米の文化を受け入れるようになりましたが、それは「敗戦」し占領政策があったからでしょう。
なお欧米の文化を受け入れはしましたが、神話を受け入れることまではしませんでした。それほど神話とは、民衆の感情に深く根付いているものであり、神話を受け入れる(変える)ことは難しいということです。まして当時の日本(倭国)は占領されたわけではないので、なおさらです。

<疑問2>
「天孫降臨神話」が中国・朝鮮半島を経て日本に伝播したとして、問題はその時期です。

5世紀ころタカムスヒを至高神とする神話が取り入れられた、としてますが、時代があまりに遅すぎないでしょうか。「天孫降臨神話」は、稲はじめ養蚕などの伝播と深く結びついている話です。また三種の神器など明らかに青銅器・鉄器時代です。「天孫降臨神話」も、こうした文明の伝播とともに伝わったと考えるのが自然です。すなわち紀元前ということです。
ちなみに私は「天孫降臨神話」を「天孫族による日本列島への侵攻」とらえ、その時期を、紀元前5~同4世紀と推測してます。

<疑問3>
日本書紀本文の「天孫降臨神話」では明らかに、その司令塔は、アマテラスではなくタカムスヒとなってます。ではなぜアマテラスを主神としなかったのか、という疑問が残ります。実際、日本書紀の一書(第一)では、そのようになってます。
もともとタカムスヒが主神だったからそれが残ったのだ、という説明もされましょうが、だからといって本文にまでそれを残すものでしょうか?。アマテラスを主神に書き換えればすむ話のはずです。

以上のように検証すると、溝口氏の説がはたして成り立つのか、はなはだ疑問です。

もちろん私は、日本神話がいくつかの構造で成り立っていることを、否定するつもりはありません。しかしながら、今回のタカムスヒの件は、別の要因によるものではないかと推測してます。
それはあらためて詳しく取り上げたいと思います。

新著です。よろしくお願い申し上げます!!




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テーマ : 歴史
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青松光晴

Author:青松光晴
古代史研究家。理工系出身のビジネスマンとして一般企業に勤務する傍ら、古代史に関する情報を多方面から収集、独自の科学的アプローチにて、古代史の謎を解明中。特技は中国拳法。その他、現在はまっている趣味は、ハーブを栽培して料理をつくることです。
著書です。



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