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古事記・日本書紀のなかの史実 (55) ~ヤマタノオロチとは何者か?

いよいよヤマタノオロチの登場です。

”夫婦の娘は8人いたが、年に一度、高志(こし)から八俣遠呂智(ヤマタノオロチ)という8つの頭と8本の尾を持った巨大な怪物がやって来て娘を食べてしまう。今年もヤマタノオロチの来る時期が近付いたため、最後に残った末娘のクシナダヒメも食べられてしまうと泣いていた。”

ヤマタノオロチの登場です。

古事記では、
”目はホオヅキのように赤く、八つの頭と尾をもっている。その身に苔やヒノキや杉が生えていて、その大きさは八つの谷と八つの丘に渡り、その腹を見ればいつも血でただれている。
と描写していますが
、何ものなのでしょうか?

「洪水の化身」などと解釈されることがある。オロチは水を支配する竜神を、クシナダヒメは稲田を表すと見做した説である。

物理学者の寺田寅彦は溶岩流を連想させると述べている]。それにちなんで、ヤマタノオロチが「野だたら」製鉄で炉から流れ出した銑鉄を表しており、婚姻は一族を支配下に治めたことを表現しており、よって、ヤマタノオロチの討伐は「野だたら」製鉄をする一族を支配下に治めて鉄剣を献上させたことを表現しているという説もある。実際、出雲近郊の山間部で時代の特定できない「野だたら」の遺跡が数多く見つかっている。”(Wikipedia「ヤマタノオロチ」より)

主な説としては、
1.川を支配する竜神
2.「野たたら」製鉄をする一族
があります。

古代中国神話に登場する神に、共工(キョウコウ)がいます。姿は人面蛇身、洪水を起こす水神とされています。洪水の「洪」の字は、この共工の名前から取られたとも言われています。

洪水説話は、創世の神話の最初の形態としてあらわれる。すでに定着的な農耕の段階にある地域で、最もおそれられたのは洪水であろう。
・・・・・
共工姜姓の神であるらしく、
羌(きょう)人の伝えたものと思われる。
・・・・・
共工の子句竜は、土地の神である社神、すなわち大地の造成者とされている。竜は洪水を起こすものであり、またこれを治めるものも竜形の神として表象された。(「中国の神話」(白川静)P67-69)”


羌族は、黄河上流、すなわち古代中国西域に勢力を張っていた部族です。黄河は古来より洪水の多い河です。洪水を治めるために、河に棲むとされた竜を信仰し、同時におそれました。

同様の信仰が日本にもあったとすれば、
「毎年の洪水を恐れた人々が、川の神の怒りを収めるために少女を生贄(いけにえ)として沈めた」という風習があった
ことを、象徴的に描いているともいえそうです。

実際、古事記にあるような”その身にコケやヒノキや杉が生えていて、大きさは8つの谷と丘にわたっている”という描写からは、自然神を象徴しているようにとれます。
また”毎年時を定めて来るということに留意すべきである”(「古事記 祝詞」倉野憲司、P85)との指摘からも、洪水を想起させます。

もちろん、2の「野たたら」製鉄をする一族という説も捨てがたいです。なぜなら、スサノオに切られたヤマタノオロチの尾から太刀が出てきたとあることから、鉄との関連性が推測されるからです。また古事記の”その腹をみれば、いつも血でただれている”という描写は、を連想させます。

もしかしたら、もともとの「ヤマタノオロチ=川の神」という話に、のちの時代の「野たたら」製鉄の話が取り込まれた可能もあるでしょう。

ところで、ヤマタノオロチがやってきた高志(こし)とは、一般的には越の国、すなわち北陸地方とされますが、はたしてどうでしょうか?

斐伊川(ひいかわ)下流にあった神門郡に古志郷という地名が残ってます。現在では、出雲市古志町一帯です。また、上流には鳥上の滝があり、ヤマタノオロチが棲んでいたとの伝承が残っています。

ヤマタノオロチが川の神であるならば、
斐伊川(ひいかわ)のほうがふさわしいといえます。

スサノオ・ヤマタノロチ 鳥上の滝
鳥上・須賀神社
↓ 新著です。よろしくお願い申し上げます!!



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青松光晴

Author:青松光晴
古代史研究家。理工系出身のビジネスマンとして一般企業に勤務する傍ら、古代史に関する情報を多方面から収集、独自の科学的アプローチにて、古代史の謎を解明中。特技は中国拳法。その他、現在はまっている趣味は、ハーブを栽培して料理をつくることです。
著書です。



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