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古事記・日本書紀のなかの史実 (63) ~オミズヌ

 前回は、国引き神話でした。

この国引き神話の主人公は、「八束水臣津野(ヤツカミズオミツ)命」で、これがスサノオの系譜にあるオミズヌとされています。

スサノオ系譜




ここでいくつか疑問が湧きます。

1.これほどまでに重要な「国引き神話」が、なぜ古事記・日本書記には記載されていないのか?
2.  オミズヌが、なぜスサノオの子孫となっているのか?
3.他にもオホトシ・ウカノミタマなどの重要神が、なぜスサノオの子孫となっているのか?
4.そもそもなぜこれらの重要神が、アマテラスの直系になっていないのか?


ここで門脇禎二氏の説を紹介しましょう。
「古代日本の『地域王国』と『ヤマト王国』」からです。

”「出雲国風土記」の残る神話には、「天の下造らしし大神(=オオナモチ神・大穴持神・大己貴命)」、つまり天下を造った神様と、国造りの神(=オミズヌ神)の二つが対になっている。

古事記・日本書紀の出雲神話ではオオナモチ神は「国つ神」、つまり一地方神にすぎない。一方、出雲を中心とした日本海域では、天下造りの神になっている。

古事記・日本書紀のいわゆる高天原神話とは別に、天下を造った神様と国を造った神様とをセットにした体系をもつ神話を伝えていたのがわかるのは、出雲だけである。(P20)

語部は、けっして民衆やその他の一般の人々に語りかけるものではなく、つねに支配者に語り上げる。地域にあっては地域の王のために、ヤマト王国の支配にはいれば、その大王のために語り上げるという任務をもっていた。(P43)

出雲の神々は「記」「紀」神話のなかでは、二重三重に変えられてしまっている。(P47)”


つまり元々出雲にあった神話に、オオナモチとオミズヌがいた。その神話は、語部が出雲の支配者に語り上げるものであった。それがヤマト王国の支配下に入ってからは、ヤマトの天皇に語り上げるようになった。その結果、神話の原型は大きく変えられていき、古事記・日本書紀編纂時に天皇の支配体制に合ったもののみが残った、と論説しています。

この仮説で上の疑問をみてみましょう。

1.これほどまでに重要な「国引き神話」が、なぜ古事記・日本書記には記載されていないのか?
 ⇒上の解釈で説明できますね。「国引き神話」は出雲の国造りの話であり、天皇家にとっては直接関係のない神話だから採択されなかったということです。

2. オミズヌが、なぜスサノオの子孫となっているのか?
 ⇒
もともと出雲の神であったオミズヌですが、それをスサノオの系譜に取り込むことにより、出雲を支配する正当性を示そうとしたのでしょう。

3.他にもオホトシ・ウカノミタマなどの重要神が、なぜスサノオの子孫となっているのか?
 ⇒これもオミズヌ同様に、スサノオの系譜に取り込まれていったと考えられます。

ここまでは理解できますが、問題は
4.そもそもなぜこれらの重要神が、アマテラスの直系になっていないのか?
です。
普通に考えれば、これほどの重要な神々であるのなら、アマテラス直系としてもよかったはずです。ところがスサノオはアマテラスの弟ですから、重要神がアマテラスの傍系となってます。なぜ直系としなかったのでしょうか?

なんともいえないところではありますが、たとえば古事記・日本書紀編纂当時は出雲系の勢力が大きく、アマテラス直系とするのは憚られるなど、何か特殊な事情があった可能性がありますね。

↓ 新著です。よろしくお願い申し上げます!!



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青松光晴

Author:青松光晴
古代史研究家。理工系出身のビジネスマンとして一般企業に勤務する傍ら、古代史に関する情報を多方面から収集、独自の科学的アプローチにて、古代史の謎を解明中。特技は中国拳法。その他、現在はまっている趣味は、ハーブを栽培して料理をつくることです。
著書です。



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