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古事記・日本書紀のなかの史実 (70) ~ オオクニヌシの試練

オホナムチは、蛇の部屋に寝かされましたが、ここから試練が始まります。

”スセリヒメは、蛇の比禮(ひれ)をオホナムチに授けて、「その蛇が食おうとしたら、この比禮を三回振って、打ち払いください」とおっしゃいました。いわれたとおりにすると、蛇は静まりました。かくして無事に寝て、翌朝蛇の室からお出でになりました。

また翌日の夜は、呉公(ムカデ)と蜂との部屋に入れられたましが、またムカデの比禮を授けて、先ほどの教えのとおりにしたので、簡単に部屋から出られました。

また鳴鏑(なりかぶら)を広い野に放ち、その矢を採ってくるように命じました。そしてオホナムチが野に入ったとき、火でぐるっと周囲を焼きました。どこから出ていいかわからなかったときに、ネズミがやってきて、「内はほらほら、外はずぶずぶ(内部はうつろで、外部はすぼんでいる)」といいました。

そこでそこを踏んでみると、そのほら穴の中に落ちて、身体が隠れ入った間に、火は穴の外を焼け過ぎました。ここでそのネズミは、その鳴鏑をくわえて持ってきてオホナムチに献上しました。その矢の羽は、ネズミの子が皆くわえてもってきました。

ここで妻のスセリヒメは、夫は死んだと思って、葬式の道具を持って泣きながら来ました。スサノオはすでにオホナムチが亡くなったと思ってその野にお出になりましたところ、オホナムチは矢を持ってきて差し上げました。

そこで家に連れてきて、広く大きな室屋に呼び入れて、スサノオの頭のシラミを取るように命じになりました。その頭を見ると、ムカデが多くいました。ここでスセリヒメが椋の実と赤土をオホナムチに授けました。オホナムチ椋の実を噛み砕き、赤土を口に含んで唾と共に吐き出したので、スサノオはムカデを噛み砕き吐き出したと思って、いとしい奴だと思って寝てしまった。


なんとも面白い話であり、かつまた細かい描写も見事で、物語としてたいへんよくできていますね。ここでいくつか解説します。

蛇の比禮(ひれ)
蛇を払う呪力をもった領布。領布とは、古代女子が頸にかけて左右にたらしたもの。

領布

鳴鏑(なりかぶら)
鏑のついた矢で、空中を飛ぶ時、鏑の穴に風が入って鳴るので、鳴鏑という

鳴鏑矢

オホナムチはスセリヒメのいうとおりに、椋の実をかみ砕き赤土をつばに含んで吐き捨てますが、スサノオはムカデをかみ砕いたのかと勘違いしたところが、なんかユーモラスですね。

スサノオがそんなオホナムチに対して、
”心に愛しく思ひて(いとしい奴だと思って)”
とあるのは、
あまりに一生懸命な姿に心を動かされたということでしょう。オホナムチとスセリヒメにしてみれば、してやったりといったところでしょうか。


↓ 新著です。よろしくお願い申し上げます!!



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テーマ : 歴史
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青松光晴

Author:青松光晴
古代史研究家。理工系出身のビジネスマンとして一般企業に勤務する傍ら、古代史に関する情報を多方面から収集、独自の科学的アプローチにて、古代史の謎を解明中。特技は中国拳法。その他、現在はまっている趣味は、ハーブを栽培して料理をつくることです。
著書です。



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