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古事記・日本書紀のなかの史実 (75) ~妻問いの歌

ヤチホコすなわちオオクニヌシは、高志国のヌナカワヒメと結婚しようとして出かけて、ヌナカワヒメの家にやってきて、歌を歌います。

ここで注目は、”出かける”というところが、”幸行(い)でましし”という表記になっていることです。

”古事記でイデマスに「幸」の字を使っているのは、天皇・倭建命及び尊貴な神の場合に限られる(「古事記 祝詞」(倉野憲司他校注))。”
とあります。
つまりヤチホコに対して、天皇にも匹敵する表現をしていることになります。
これをどのように解釈すればいのでしょうか?

普通に考えれば、当時ヤチホコは、後世の天皇にも匹敵する絶大なる支配者であったということです。その支配領域がどこかは定かではありませんが、少なくとも出雲地方一帯では、ということでしょう。

また、家の前にやってきて歌を歌う、というのは、妻問い婚が一般的であったことを示していますね。

”日本に置いて妻問婚は、飛鳥・奈良時代に先立つ古墳時代に一般的であったと考えられている。妻と夫はそれぞれの氏族で居住し、妻の財産は妻方の氏族が、夫の財産は夫方の氏族が管理した。
求婚は「ヨバヒ」といい、女が許せばその場で結婚が成立した。ヨバヒには戸口などから女を呼ぶだけといった形から、歌の贈答を経るものもあったらしい。”(Wikipedia「妻問い婚」より)


以下歌の全訳です。訳は「現代語訳 古事記」(福永武彦訳)からです。なお<>部は、「古事記 祝詞」(倉野憲司他校注)を参考にしてます。

”ヤチホコの名前をもつ尊い神の命(みこと)は、
この大八島国の隅々まで、妻なるひとを求め歩いたが、
その人をどこにも求め得なかった。

遠い遠い高志(こし)の国
心ばえのすぐれた女がいるとお聞きになり、
姿かたちのうるわしい女がいるとお聞きになり、
妻にしようとお出かけになった。

空しく幾たびも通ってこられた。
太刀の下げ緒もまだ解くことがなく、
顔をかくした襲(おすい)もいまだ解くにいたらない。

恋しい処女(おとめ)の、籠もり寝ている寝屋の板戸を
押しあぐみ私は立っている。
引きあぐみ私は立っている。

このつれない板戸の前に、空しく私のたたずむ間に
いつしか夜はふけ、青山のほうで怨むように
鵺(ぬえ)が鳴いている。
野原の向こうから雉(きじ)の鳴声が響いている。
庭に飼う鶏(かけ)さえも、はや暁を告げ始めた。

なんという怨めしい鳥どもだろう。

私も焦がれ死にに死のうから、あの鳥どもも打ち殺して、
朝を促すのをやめさせたいものだ。

<空をかける使(鳥)よ
これをば事件を伝える語り言としようよ>”

と歌いました。
ところでヤチホコすなわちオオクニヌシは、これまでに
稲羽のヤガミヒメ
スサノオの娘であるスセリヒメ

を娶ってます。
それにもかかわらず、”妻を娶ることができないで”、というのはどういうことでしょうか?

当時の支配者は多くの妻をもつことが普通だったから、そういっているのだろう、というのが一般的な解釈でしょう。
あるいはオオクニヌシのモデルとなる支配者がたくさんいて、ヤチホコやオホナムチもその一人だった。そのなかの一人の物語だったという可能性もありますね。

さて、ヌナカワヒメは戸を開けずに家の内より歌います。

”ヤチホコの名前を持つ、尊い命は、
そのようにおおせられますけれども、
私は風に吹かれてそよぐ、
草のような処女(おとめ)にすぎません。

あなたがお呼びになったところで、
どうして出て逢われましょうか。

私の心は、浦の渚に住む鳥でございます。
今は私の心のままにしておりますが、
いつかはあなたに抱かれる鳥となるので
ございますから、

この恋のために、
ゆめゆめお命をお捨てになっては
なりません。

<空をかける使(鳥)よ
これをば事件を伝える語り言としようよ>

青山に太陽が隠れ、
射玉(ひおうぎ)の実のように黒い夜ともなれば、
戸を開いてあなたをお迎えいたしましょう。

朝日が華やかに射し込むように、
あなたは嬉しげな顔を見せてお出でになり、
栲(たく、コウゾ)の皮の緒綱(おづな)のように
白い腕(かいな)で
泡雪のようにやわらかな、私の若々しい胸を、
抱きしめ抱きしめて、
玉のようなあなたの手と、
玉のような私の手とを、
互いに取り合い枕として、

足を長くうち延ばして、
安らかに寝ましょうものを。

どうぞそんなに夢中になって、
私を恋い焦がれないでくださいまし。

<ヤチホコの名前を持つ、尊い命よ
これをば事件を伝える語り言としようよ>”

と歌いました。福永武彦氏の訳は意訳で、文学的な解釈が多用されてます。そのせいもありますが、なんともなまめかしい表現ですね。

二人は、その夜は逢わずに、次の日の夜、逢って結ばれます。

ヌナカワヒメ↓ 新著です。よろしくお願い申し上げます!!




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青松光晴

Author:青松光晴
古代史研究家。理工系出身のビジネスマンとして一般企業に勤務する傍ら、古代史に関する情報を多方面から収集、独自の科学的アプローチにて、古代史の謎を解明中。特技は中国拳法。その他、現在はまっている趣味は、ハーブを栽培して料理をつくることです。
著書です。



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