古事記・日本書紀のなかの史実 (82) ~ スクナビコナはどこから来てどこへ行った?
オオクニヌシの子孫の系譜のあと、話はオオクニヌシの国造りに移ります。
”オオクニヌシが出雲の美保岬にいたとき、鵝(蛾の誤りとされる)の皮を丸剥ぎにして衣服とする小さな神が、海の彼方から天の羅摩船(あめのかがみのふね)に乗って現れた。
オオクニヌシはその小さな神に名を尋ねたが、答えがなく、従者もその名を知らなかった。そこにヒキガエルの多邇具久(タニグク)が現れて、「これは久延毘古(クエビコ)なら知っているでしょう」と言ったクエビコに尋ねると、「その神はカミムスヒの御子の少名毘古那(スクナビコナ)神である」と答えた。
クエビコは山田のかかしで、歩行できないが、天下のことは何でも知っている神である。
カミムスヒはスクナビコナを自分の子と認め、スクナヒコナにオオクニヌシと一緒に国造りをするように言った。オオクニヌシとスクナヒコナは協力して葦原中国の国造りを行った。その後、スクナヒコナは常世に去った。
オオクニヌシは、「これから一人でどうやって国を造れば良いのか」と言った。その時、海を照らしてやって来る神がいた。
その神は、「丁重に私を祀れば、国造りに協力しよう」と言った。どう祀るのかと問うと、倭の東の山の上に祀るよう答えた。この神は現在御諸山(三輪山)に鎮座する神である。”(Wikipedia「大国主の国づくり」の古事記訳を一部修正)
オオクニヌシが美保﨑にいたときにやってきた小さな神が、スクナビコナです。乗ってきた羅摩舟の羅摩とはガガイモのことで、この実を割ると小舟の形に似ているので、カカミ舟といいました。桃太郎の桃や瓜子姫の瓜と同じ性質のものです(「古事記 祝詞」倉野憲司他校注P107より)。
スクナビコナについてですが、
”国造りの協力神、常世の神、医薬・温泉・禁厭(まじない)・穀物・知識・酒造・石の神など多様な性質を持つ。
酒造に関しては、酒は古来薬の一つとされ、スクナビコナが酒造りの技術を広めたことと、神功皇后が角鹿(敦賀)より還った応神天皇を迎えたときの歌に「少名御神」の名で登場することから、酒造の神であるといえる。”(Wikipedia「スクナビコナ」より)
なお日本書紀では、タカムスヒの子神とされています。

ところでスクナビコナはどこからやってきたのでしょうか?
”海の彼方からやってきた”とあり、「海の彼方」を「天上界」など抽象的概念と考えるのが普通でしょう。一方、”海流に乗って舟に乗ってきた”と解釈すれば、北部九州の高天原あるいは朝鮮半島方面からとも考えられます。
さてオオクニヌシは、カミムスヒの命令とおりに、スクナビコナと国造りをします。ところがなぜか突然、スクナビコナは常世の国へ行ってしまいます。
常世の国とは、”海のあなた極遠の地にあるとこしえの齢の国”です(倉野同書)。一方、日本書紀には、「熊野の御碕から常世郷に行った」とも「淡嶋」に行って、粟茎(あわがら)にのぼったところが、弾かれて常世郷に至った、とも伝えられています。
ここでいう熊野ですが、出雲の熊野でしょう。なぜなら話の舞台が出雲近辺の話とみられること、またスクナビコナがやってきたのが出雲の美保岬であり、旅立つのもその近傍と考えるのが自然だからです。実際、島根県松江市八雲町熊野に熊野大社があります。また「日本書紀(上)」(宇治谷孟訳)でも、根拠は書いてませんが「出雲の熊野の岬」と訳されています。
「淡嶋」も兵庫県淡路島と考えてしまいがちですが、それは早計です。
鳥取県に粟島(あわしま)神社があります。
”鳥取県米子市彦名町にある神社である。
境内は標高36メートルの山(明神山)になっているが、かつては中海の小島のひとつだった。島(山)全体が神山とされ、古い時代には社殿は山麓にあったとされている
733年(天平5年)の『伯耆国風土記』(逸文)では、こびとのスクナビコナ(少彦名命)がこの地で粟を蒔いて、実ってはじけた粟の穂に乗って常世の国へ渡り、そのために粟島と呼ばれている、と書かれている。
民話では、こびとであるスクナビコナが天界から下界の海へ落ちてしまい、空豆の皮で船を作って伯耆の島(のちの粟島)に漂着する。そこで出雲の神であるオオクニヌシ(大国主)と知己になる。スクナビコナが排便すると、天界にいた頃に食べた粟の実の種が出てきたので、これを島に植えたところ数年で島は粟が一面に広がった。すると、アワ畑に据えられた案山子のお告げで天界に戻るように命を受け、粟の茎を曲げて穂につかまり、茎がまっすぐに戻る力で天界へ飛んでいった。このことから、オオクニヌシはこの島を「粟島」と名づける。”(Wikipedia「粟島神社 (米子市)」より)
スクナビコナは、出雲の三保岬からやってきたのですから、旅立つのも出雲近辺とするのが自然ですね。
↓ 新著です。よろしくお願い申し上げます!!
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”オオクニヌシが出雲の美保岬にいたとき、鵝(蛾の誤りとされる)の皮を丸剥ぎにして衣服とする小さな神が、海の彼方から天の羅摩船(あめのかがみのふね)に乗って現れた。
オオクニヌシはその小さな神に名を尋ねたが、答えがなく、従者もその名を知らなかった。そこにヒキガエルの多邇具久(タニグク)が現れて、「これは久延毘古(クエビコ)なら知っているでしょう」と言ったクエビコに尋ねると、「その神はカミムスヒの御子の少名毘古那(スクナビコナ)神である」と答えた。
クエビコは山田のかかしで、歩行できないが、天下のことは何でも知っている神である。
カミムスヒはスクナビコナを自分の子と認め、スクナヒコナにオオクニヌシと一緒に国造りをするように言った。オオクニヌシとスクナヒコナは協力して葦原中国の国造りを行った。その後、スクナヒコナは常世に去った。
オオクニヌシは、「これから一人でどうやって国を造れば良いのか」と言った。その時、海を照らしてやって来る神がいた。
その神は、「丁重に私を祀れば、国造りに協力しよう」と言った。どう祀るのかと問うと、倭の東の山の上に祀るよう答えた。この神は現在御諸山(三輪山)に鎮座する神である。”(Wikipedia「大国主の国づくり」の古事記訳を一部修正)
オオクニヌシが美保﨑にいたときにやってきた小さな神が、スクナビコナです。乗ってきた羅摩舟の羅摩とはガガイモのことで、この実を割ると小舟の形に似ているので、カカミ舟といいました。桃太郎の桃や瓜子姫の瓜と同じ性質のものです(「古事記 祝詞」倉野憲司他校注P107より)。
スクナビコナについてですが、
”国造りの協力神、常世の神、医薬・温泉・禁厭(まじない)・穀物・知識・酒造・石の神など多様な性質を持つ。
酒造に関しては、酒は古来薬の一つとされ、スクナビコナが酒造りの技術を広めたことと、神功皇后が角鹿(敦賀)より還った応神天皇を迎えたときの歌に「少名御神」の名で登場することから、酒造の神であるといえる。”(Wikipedia「スクナビコナ」より)
なお日本書紀では、タカムスヒの子神とされています。

ところでスクナビコナはどこからやってきたのでしょうか?
”海の彼方からやってきた”とあり、「海の彼方」を「天上界」など抽象的概念と考えるのが普通でしょう。一方、”海流に乗って舟に乗ってきた”と解釈すれば、北部九州の高天原あるいは朝鮮半島方面からとも考えられます。
さてオオクニヌシは、カミムスヒの命令とおりに、スクナビコナと国造りをします。ところがなぜか突然、スクナビコナは常世の国へ行ってしまいます。
常世の国とは、”海のあなた極遠の地にあるとこしえの齢の国”です(倉野同書)。一方、日本書紀には、「熊野の御碕から常世郷に行った」とも「淡嶋」に行って、粟茎(あわがら)にのぼったところが、弾かれて常世郷に至った、とも伝えられています。
ここでいう熊野ですが、出雲の熊野でしょう。なぜなら話の舞台が出雲近辺の話とみられること、またスクナビコナがやってきたのが出雲の美保岬であり、旅立つのもその近傍と考えるのが自然だからです。実際、島根県松江市八雲町熊野に熊野大社があります。また「日本書紀(上)」(宇治谷孟訳)でも、根拠は書いてませんが「出雲の熊野の岬」と訳されています。
「淡嶋」も兵庫県淡路島と考えてしまいがちですが、それは早計です。
鳥取県に粟島(あわしま)神社があります。
”鳥取県米子市彦名町にある神社である。
境内は標高36メートルの山(明神山)になっているが、かつては中海の小島のひとつだった。島(山)全体が神山とされ、古い時代には社殿は山麓にあったとされている
733年(天平5年)の『伯耆国風土記』(逸文)では、こびとのスクナビコナ(少彦名命)がこの地で粟を蒔いて、実ってはじけた粟の穂に乗って常世の国へ渡り、そのために粟島と呼ばれている、と書かれている。
民話では、こびとであるスクナビコナが天界から下界の海へ落ちてしまい、空豆の皮で船を作って伯耆の島(のちの粟島)に漂着する。そこで出雲の神であるオオクニヌシ(大国主)と知己になる。スクナビコナが排便すると、天界にいた頃に食べた粟の実の種が出てきたので、これを島に植えたところ数年で島は粟が一面に広がった。すると、アワ畑に据えられた案山子のお告げで天界に戻るように命を受け、粟の茎を曲げて穂につかまり、茎がまっすぐに戻る力で天界へ飛んでいった。このことから、オオクニヌシはこの島を「粟島」と名づける。”(Wikipedia「粟島神社 (米子市)」より)
スクナビコナは、出雲の三保岬からやってきたのですから、旅立つのも出雲近辺とするのが自然ですね。
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