古事記・日本書紀のなかの史実 (89) ~ オオトシ以下の系譜が示唆すること
前回まで、オオトシの生んだ五神の、オオクニミタマ、カラ、ソホリ、シラヒ、ヒジリ神の領域は、出雲、韓国、北部九州であり、真ん中の、対馬・壱岐すなわち天国(あまぐに)は、空白地域としてぽっかり空いている、という話でした。
これが何を意味するか、という大きなテーマがあるのですが、その前に、オオトシが生んだ子神を、さらにみていきましょう。
五神の次に生まれたのが、カグヨヒメを娶して生んだオオカガヤマトオミとミトシの二柱です。
この次が問題です。
アメチカルミヅヒメを娶して、オキツヒコ、オキツヒメ、オオヤマクイ、ニハツヒ、アスハ、ハヒキ、カガヤマトオミ、ハヤマト、ニハタカツヒ、オオツチを生み、以上を九神(ここのはしら)といいます。
以上まとめると、次になります(字が小さくなるので、縦置きにしてます。)。

以上について古田氏は、次のように推測します。
(1)ここだけ”兄弟の数”がむやみに多いのも変だ(実際は多くの兄弟があっても、主要なものだけを系譜化するから、通例少ない)。
(2)ここで「九神」としてしめくくっていながら、実際はこの”兄弟”は「十神」だ。はじめの「奥津日子(オキツヒコ)と「奥津比売(オキツヒメ)を「あわせて一神」と数えて、九神としたのだろう」との説(岩波、日本古典文学大系本、註)があるが、不自然である。そんな必要がどこにあろう。やはり、この二神は次の大山咋神(オオヤマクヒ)以下とは、世代がちがうのだ。
下図の形で「2”ー10”」をあわせて「九神」といっているのだ。それを横に並べ、一見兄弟であるかに見える形で、ここに挿入しているのである。すなわち、ここに『古事記』作者の「挿入」の手口がすけて見えているのである。

なんとも大胆な推測です。九神は兄弟でななく、直系だというのです。それを前提として、さらに次のように述べています。
”これらの九神のなかで、いわば「絶対年代」の明らかにできる神がある。それは8”の羽山戸(ハヤマト)神だ。
『羽山戸神、大気都比売(オオゲツヒメ)を娶りて生む子は・・・。』
ところが、この羽山戸神の妻、大気都比売について異色の説話がある(穀物発生説話)。その中につぎの一節がある。
『(速須佐之男命、ハヤスサノオ)乃ち其の大宜津比売(オオケツヒメ)神を殺す。』 <五穀の起源>
つまり、大気都比売は、スサノオと同時代だ。すなわち、この比売を妻とした8”の羽山戸神もまた、スサノオと同時代なのである。”(以上「盗まれた神話」(古田武彦)P403-404)
以上の説についてどのように考えますか?
まず”九神は兄弟ではなく直系”についてですが、これについては、なんともいえないところです。そのように解釈もできますが、断定できるだけの論拠もありません。
ところで、古事記のなかでは、イザナギ・イザナミが、神生みの際多くの神を生みました。この点、今回の九神のケースと似ていますね。

こうした神々についても、実態はよくわかっていませんが、わかりにくい名前が多いことから、古層の神々と考えられます。また、これだけ複雑な名前の神々を、通説でいうように「8世紀の史官がわざわざ創作した」ということも、考えにくいですね。
私はこうした神々は、古来より各地で信仰されていた神々を集め、イザナギ・イザナミという皇統の下に集約することにより、「皇統がすべての神々のおおもとである」と正当化したのではないかと考えていることは、これまでにお話してきたとおりです。
ここで、オオヤマツミ、オオワダツミという、オオヤマクイと似た神がいることにも注目です。
ということは、この九神の系譜も、同じように出雲地方などで信仰されていた神々を集め、オオトシの下に集約したとも考えられます。
直系なのか兄弟なのかはさておいて、いずれにしろ、オオトシの子(ハヤマト)の妻であるオオゲツヒメと、オオトシの親であるスサノオが同時代であり、時代が合わないことからも、オオトシ以下の系譜は、継ぎ足された可能性を考えてもいいのではないでしょうか?
↓ 新著です。よろしくお願い申し上げます!!
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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これが何を意味するか、という大きなテーマがあるのですが、その前に、オオトシが生んだ子神を、さらにみていきましょう。
五神の次に生まれたのが、カグヨヒメを娶して生んだオオカガヤマトオミとミトシの二柱です。
この次が問題です。
アメチカルミヅヒメを娶して、オキツヒコ、オキツヒメ、オオヤマクイ、ニハツヒ、アスハ、ハヒキ、カガヤマトオミ、ハヤマト、ニハタカツヒ、オオツチを生み、以上を九神(ここのはしら)といいます。
以上まとめると、次になります(字が小さくなるので、縦置きにしてます。)。

以上について古田氏は、次のように推測します。
(1)ここだけ”兄弟の数”がむやみに多いのも変だ(実際は多くの兄弟があっても、主要なものだけを系譜化するから、通例少ない)。
(2)ここで「九神」としてしめくくっていながら、実際はこの”兄弟”は「十神」だ。はじめの「奥津日子(オキツヒコ)と「奥津比売(オキツヒメ)を「あわせて一神」と数えて、九神としたのだろう」との説(岩波、日本古典文学大系本、註)があるが、不自然である。そんな必要がどこにあろう。やはり、この二神は次の大山咋神(オオヤマクヒ)以下とは、世代がちがうのだ。
下図の形で「2”ー10”」をあわせて「九神」といっているのだ。それを横に並べ、一見兄弟であるかに見える形で、ここに挿入しているのである。すなわち、ここに『古事記』作者の「挿入」の手口がすけて見えているのである。

なんとも大胆な推測です。九神は兄弟でななく、直系だというのです。それを前提として、さらに次のように述べています。
”これらの九神のなかで、いわば「絶対年代」の明らかにできる神がある。それは8”の羽山戸(ハヤマト)神だ。
『羽山戸神、大気都比売(オオゲツヒメ)を娶りて生む子は・・・。』
ところが、この羽山戸神の妻、大気都比売について異色の説話がある(穀物発生説話)。その中につぎの一節がある。
『(速須佐之男命、ハヤスサノオ)乃ち其の大宜津比売(オオケツヒメ)神を殺す。』 <五穀の起源>
つまり、大気都比売は、スサノオと同時代だ。すなわち、この比売を妻とした8”の羽山戸神もまた、スサノオと同時代なのである。”(以上「盗まれた神話」(古田武彦)P403-404)
以上の説についてどのように考えますか?
まず”九神は兄弟ではなく直系”についてですが、これについては、なんともいえないところです。そのように解釈もできますが、断定できるだけの論拠もありません。
ところで、古事記のなかでは、イザナギ・イザナミが、神生みの際多くの神を生みました。この点、今回の九神のケースと似ていますね。

こうした神々についても、実態はよくわかっていませんが、わかりにくい名前が多いことから、古層の神々と考えられます。また、これだけ複雑な名前の神々を、通説でいうように「8世紀の史官がわざわざ創作した」ということも、考えにくいですね。
私はこうした神々は、古来より各地で信仰されていた神々を集め、イザナギ・イザナミという皇統の下に集約することにより、「皇統がすべての神々のおおもとである」と正当化したのではないかと考えていることは、これまでにお話してきたとおりです。
ここで、オオヤマツミ、オオワダツミという、オオヤマクイと似た神がいることにも注目です。
ということは、この九神の系譜も、同じように出雲地方などで信仰されていた神々を集め、オオトシの下に集約したとも考えられます。
直系なのか兄弟なのかはさておいて、いずれにしろ、オオトシの子(ハヤマト)の妻であるオオゲツヒメと、オオトシの親であるスサノオが同時代であり、時代が合わないことからも、オオトシ以下の系譜は、継ぎ足された可能性を考えてもいいのではないでしょうか?
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