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古事記・日本書紀のなかの史実 (96) ~「出雲王朝」は存在したか?

ここまで、出雲には古事記・日本書紀に先在した史書、いわば「出雲古事記」があり、そこには
1.神統譜(神々の系譜)
2.神々の説話
3.政治地図
があったはずだ、という話でした。そしてそのなかの神統譜や説話が、古事記・日本書紀に引用されたのではないか、という話でした。

最後に残された課題があります。それは



「大国中心政治地図」のもつ”「天国」部分の空白”の意味です。すなわち「大国政治地図」には、「天国」部分がスッポリと抜けている、という点です。

この点について、古田氏は次のように推測しています。
”大国は、
・自己の根拠地たる出雲
・朝鮮半島釜山近辺たる韓(加羅)の地
・博多湾岸とその山地周辺に当る三点(糸島郡付近。白木原付近。大宰府・基山・久留米付近)

を勢力下におさめていた。

つまり、朝鮮半島から日本列島に至る、あの幹線道路の始発点と終点をおさえている。だが、それらはいずれも「点」にすぎず、”狭い領域”だ。博多湾岸近辺も、この三点に分かれている。だから、これら”小領域”に比べて、自己の本拠(面)を「大国」と誇称したのではないだろうか。

問題はつぎだ。
始発点と終点の間に横たわる、”対馬・壱岐を中心とする天国(あまぐに)部分は、政治的に”この地図から欠落している。

逆に、この同一時点において、この同一状態を「天国」側から見てみよう。自己の占有する海上の島々、それは東は隠岐島、南は姫島、西は五島列島と、かなりの海上領域を占有している。しかし、その周辺の”大きな陸地部分”は、”未だ支配下にない”のだ。
ー これこそ「天孫降臨以前」の状況にほかならない。”

次の図は、大国と天国の中心領域を示したものです。大国は、出雲・新羅・北部九州三領域を、天国は、その間の壱岐・対馬を中心として支配してました。
なお天国の全体領域について、古田氏は”
東は隠岐島(島根県)から、南は姫島(大分県)、西は五島列島(長崎県)”を想定していますが、はたしてそこまで広範囲であったかどうかはなんともいえないところなので、含めていません。



大国中心地図


”そして”新しい勢力の拡大”を求めて”博多湾岸とその山地周辺”(葦原中国)を割譲することを、その地への支配権をもっていた大国主神に迫った。これが「天孫降臨」に際しての「国譲り」交渉の地理的背景なのではあるまいか。
だから、ニニギが「筑紫の日向の高千穂のクシフル峯」に”天降った”とき、そこは無人地帯、あるいは「無神地帯」だったわけではない。古きソホリの神を信ずる人々、出雲の大国主神の支配下にいた人々の住む地域だったのである。しかも、その隣なる笠沙の地、それは「白日神」のいるところであり、その背後には「聖(日後、ひじり)神」のいる所があった。すなわち、太陽信仰の聖地であった。その土地は「大国」の部族と、なんらかの宗教的信仰をもっていたのではなかろうか。

今は、この「大国中心政治地図」がすなわち、「天孫降臨以前の政治地図」であることを、確認するにとどめたいと思う。

近畿天皇家の『記・紀』神話のなかに、九州王朝の神話があり、さらに、その九州王朝に先在した、出雲の神々とその神話を見出した。
これは決して近畿天皇家配下の一豪族の説話などではない。天照大神以前の古(いにし)えから、その政治地図の示す領域に、独立した主権をもっていたのであるから。
それ故、わたしはこの日本最古の王朝に対し、今、「出雲王朝」の名を呈しよう。”(以上「盗まれた神話」(古田武彦)P413-415)

この大国がアマテラスの天孫降臨まで、西日本の日本海側の陸地を支配していたからには、その勢力が当時の日本列島において屈指のものであったことは、想像に難くありません。その巨大勢力に対して、「出雲王朝」という名を呈しています。


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青松光晴

Author:青松光晴
古代史研究家。理工系出身のビジネスマンとして一般企業に勤務する傍ら、古代史に関する情報を多方面から収集、独自の科学的アプローチにて、古代史の謎を解明中。特技は中国拳法。その他、現在はまっている趣味は、ハーブを栽培して料理をつくることです。
著書です。



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