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古事記・日本書紀のなかの史実 (97) ~「出雲古事記」を検証する

 ここまで数回にわたって、出雲には古事記・日本書紀に先在した史書、いわば「出雲古事記」があり、そこには
1.神統譜(神々の系譜)
2.神々の説話
3.政治地図
があった。
これらは近畿天皇家やそれに先立つ九州王朝のものより古く、大国を中心とした「出雲王朝」のものだった、という話でした。

以上はあくまで古田武彦氏の「仮説」ですが、さてあなたはどのように考えますか?

「いや、そんなものは単なる推測だ。何も証明できないじゃないか?」
というかもしれません。

あらためて検証してみましょう。まず
1.神統譜(神々の系譜)です。
古田氏は、古事記の系譜は捏造されたものであり、元の神統譜は、次のようなものであったと推測しています。



出雲神統譜復元
ところで門脇禎二氏は、

”「出雲国風土記」の残る神話には、「天の下造らしし大神(=オオナモチ神・大穴持神・大己貴命)」、つまり天下を造った神様と、国造りの神(=オミズヌ神)の二つが対になっている。”「古代日本の『地域王国』と『ヤマト王国』」P20と述べています。

上の神統譜では、オミズヌはオオクニヌシの祖父になります。普通に考えれば、「天の下造らしし大神(=オオナモチ神・大穴持神・大己貴命=オオクニヌシ)」が先で、国造りの神(=オミズヌ神)がそのあとになるはずですが、そうはなっていません。またオミズヌの前にいる神々は何であったのかも、判然としません。
このようにみてみると、上の神統譜も、どこまで正確なものなのかはよくわからない、ということになってきます。

次に3.政治地図についてです。古田氏は、次のような大国の支配領域を想定しています。

大国中心地図

このうち、大国・韓・白日の位置はおおむねこのとおりとしても、ソホリ・聖については、諸説あります。

ソホリについて、
”韓神・曾富理(ソホリ)神を、『延喜式』神名帳に見える宮内省に鎮座する韓神・園神と同神とみる説がある。
 邇邇芸(ニニギ)命の降臨地を書紀の一書第六に「添山(ソホリノヤマ)峰」とするのを、新羅の神話において神童君臨の所を「徐伐」(Sio-por)というのと同源であるとした上で、新羅の王都を意味するソフルが神霊の来臨する聖処を原義とするとし、「曾富理」が京城の意で、この神を京城・帝都の守護神とする説がある。
百済の王都泗沘も「所夫里」と呼ばれ、書紀第八段第一書に素戔嗚(スサノオ)尊が五十猛(イソタケル)神を率いて新羅国に降り「曾尸茂利」(ソシモリ)にいたとある。現『古事記』が平安初期に成立したものとする立場から、この神が、遷都に際して平安の新京の護り神として秦氏が奉斎した神であるとし、秦氏がその根拠地に平安京を誘致することに成功したことで、朝鮮半島の京城の護り神である曾富理神を新たに勧請したものとする説がある。”(「国学院大学 古典文化学事業 神名データベース 曾富理神」より)

聖について、
”この神の名義は、「ひじり」の語は「日知り」で暦日を知る者の意かとされ、大年神系譜の農耕神的性格から、農事に重要な暦を掌る神とする説がある。また、「ひじり」の語について霊性を体した者の意かとする説もある。同母の韓神・曾富理神・白日神を渡来系氏族の秦氏が奉斎する外来の神とするのと関連して、この神も同じく秦氏の奉斎した外来の神ではないかとする説がある。”(同上「聖神」より)

以上のように、反論もされるところです。
しかしながら、
「出雲王朝」があったのであれば、当然のことながら、彼ら自身、神統譜をもっていたはずです。それが上の神統譜とピッタリ同じでなくとも、本筋の説をゆるがすことにはならないでしょう。政治地図についても同様のことがいえますね。

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青松光晴

Author:青松光晴
古代史研究家。理工系出身のビジネスマンとして一般企業に勤務する傍ら、古代史に関する情報を多方面から収集、独自の科学的アプローチにて、古代史の謎を解明中。特技は中国拳法。その他、現在はまっている趣味は、ハーブを栽培して料理をつくることです。
著書です。



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