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日本語系統論(11)~形態法上の手段としての重複

ここまで「言語類型地理論」をみてきました。
その特徴として、
a.流音のタイプ
b.形容詞のタイプ 
c.名詞の数と類別
d.動詞の人称表示
e.名詞の格表示
f.一人称複数の包含・除外の区別
がありました。

今回は最後の、

g.形態法上の手段としての重複
です。

この特徴について松本氏は、”環日本海諸語を含めた太平洋沿岸言語圏の全体的な特徴を浮き彫りにする。”と述べています。

「重複」とは、
語の全体または一部を繰り返すことによって、物や動作の反復、増幅、強調あるいは逆に軽減、縮小などを表す造語法ないし形態上の手法。”
です。
この特徴は日本語に顕著です。

「人々」「山々」「国々」
「日々」「月々」「代々」「ときどき」「ところどころ」
「赤々」「軽々」
「重々」「軽々しい」
「華々しい」「女々しい」
「かわるがわる」「泣く泣く」
「とびとび」「思い思い」

「惚れ惚れする」「晴れ晴れする」
など数多くありますね。

重複法欠如


分布としては、これまで同様、内陸部と太平洋沿岸部に画然と分けられます。
注目は、重複法のある言語として、シュメール語、ブルジャスキー語、そしてドラヴィダ語があることです。
そしてアフリカ大陸では、南半分のニジェール・コンゴ、コイサン語が挙げられます。

これに関して
”南インドのドラヴィダ語圏は、サハラ以南のアフリカとオーストラリア・ニューギニアという2つの重複言語圏の間にあって、あたかも両者をつなぐ橋渡し的な役割を演じているかのように見える。”(P168)
と述べています。

つまり出アフリカを果たした人々が、南インドを通過して、環太平洋まで進出してきた足跡と一致しているわけです。

ところで、前に大野晋氏の日本語・タミル(ドラヴィダ)語同系説への批判を書きましたが、この話と矛盾するではないか、と思っている方も多いでしょう。
ところが「日本語・タミル語同系説」は全く間違っていると主張しているのかというと、そうではなく、あくまで大野氏のいう2000から2500年前に伝わったという時期について、批判しているのです。松本氏はさらに古い時代までさかのぼれば、同系の可能性はある。」と述べています。

”現在世界で話されている人類のすべての言語が、何万年あるいが何十万年前に、アフリカのどこかで話されていた例えば”原始ホモサピエンス語”あるいは”人類祖語”というような単一言語に遡る可能性が決してないとはいえない。”(同書P31)

この”原始ホモサピエンス語”あるいは”人類祖語”が存在したとすると、それが出アフリカ後に、南インドを通過して、環太平洋に伝わったということになります。その痕跡が、重複法の分布に残っていることになります。

ちなみに前回の、f.一人称複数の包含・除外の区別においても、ドラヴィダ語は環太平洋言語圏と同じです。

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青松光晴

Author:青松光晴
古代史研究家。理工系出身のビジネスマンとして一般企業に勤務する傍ら、古代史に関する情報を多方面から収集、独自の科学的アプローチにて、古代史の謎を解明中。特技は中国拳法。その他、現在はまっている趣味は、ハーブを栽培して料理をつくることです。
著書です。



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