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古事記・日本書紀のなかの史実Ⅱ (12) 天孫降臨①~司令神は誰か?

オオクニヌシが国譲りをしましたが、ここからがハイライトである天孫降臨です。

アマテラスタカギ(タカムスヒ)アマテラスの子であるアメノオシホミミに、「葦原中国平定が終わったので、以前に委任した通りに、天降って葦原中国を治めなさい。」と仰られた。
アメノオシホミミは、「天降りの準備をしている間に、子が生まれました。名はニニギです。この子を降すべきでしょう。」と答えた。この御子は、タカギの娘の万幡豊秋津師比売(ヨロヅハタトヨアキヅシヒメ)命との間の子であるアメノホアカリ次がニニギである。
それでニニギに「豊葦原の水穂の国は、そなたが治める国である。ゆえに、天降りなさい。」と仰られた。】

アマテラスとタカギがアメノオシホミミに対して指示していますが、ここは多くの論者が注目している論点です。なぜなら天孫降臨は古事記神代のハイライトであり、これが誰の指揮命令で行われたのかが、皇統の正当性にも関係してくるからです。つまりこの指揮命令を行った神こそ、皇統にふさわしいということになります。

古事記では、”天照大御神、高木神の命以ちて”と記載されており、一般的に
天照大御神、高木神のお言葉で”と訳されます。つまり両神が共同して命令したことになります。

ところが日本書紀ではさまざまに描かれています。司令神は、
・本文 タカムスヒ
・一書(第一) アマテラス
・一書(第二) タカムスヒアマテラス
・一書(第四) タカムスヒ
・一書(第六) タカムスヒ
となっています。
これらをどのように解釈すればいいのでしょうか?

これについて、通説の観点から論説した論文があるので紹介しながら、考えていきましょう。
<研究ノート>「天孫降臨神話について」(安藤美紀)からです。

まず、一書がA系統とB系統の二つの系統に分類できるとして、一書のもととなった考え方もA・Bに対応して二系統あったのではないか、と推察してます。そのうえで、

”男女二神が司令神となり、我が子を降臨させるイメージは、イザナギ・イザナミの例を挙げるまでもなく、根源的に人間の心に備わるものである。また出産は、人間の基盤をなす最初の、しかも重要な生産として、「物を生成することの霊異なる御魂」(『古事記伝』)=ムスビノ神と直結する。従って、我が子を降臨させる神は、原義として当初はムスビの神=タカムスビ・カミムスビでなければならなかったはずである。
しかし、アマテラスが皇祖神としての地位を固め、皇孫との関係においてタカムスビと結びつくようになり、その一方でカミムスビが出雲系の神としか関りをもたないことから、やがてアマテラスがカミムスビにとってかわって司令神と考えられるようになったのではないだろうか。語自体の原義としてはムスビの神を示していても、実際にはアマテラスが想定されるようになったのである。”

天孫降臨神話異伝

当初は司令神は、タカムスビとカミムスビのセットであったが、カミムスビがアマテラスにとって代わられたのではないか、と推察してます。すなわち
タカムスビ+カミムスビ

タカムスビ+アマテラス

という流れです。

”これと同じことが、記紀神話の司令神についてもいえるのではないだろうか。つまり、タカムスビは原義として皇孫と結びつく神で、アマテラスは皇祖ー皇孫の連想からつくりあげられた人工的な関係によって皇孫と結びつく神である、と。タカムスビとの関係が、生産を媒介とした呪術的・原始祭礼的なものなら、アマテラスとの関係は、皇祖神としての系譜を媒介とした、制度的・政治的なものだといえる。ともに血縁関係であるという立場は同じでも、前者は自然発生的・後者は作為的である。”

すなわち
タカムスビ
⇒・原義として皇孫と結びつく神
 ・生産を媒介として呪術的・原始祭礼的
 ・自然発生的

アマテラス
⇒・皇祖(皇孫の連想からつくりあげられた人工的な関係)によって皇孫と結びつく神
 ・皇祖としての系譜を媒介とした制度的・政治的
 ・作為的
と分析しています。

たしかに天孫降臨が後世の史官による創作ということであれば、こういう解釈も成り立つかもしれません。しかしながら、天孫降臨を「なんらかの史実に基づいたもので、それを伝えた伝承があった」という観点から解釈すればどうでしょうか。

まず司令神についてです。
注目は日本書紀の本文です。そこでの司令神はタカムスビです。日本書紀本文は、いわば当時の政権の公式見解ですが、そこでタカムスビを司令神としてるわけです。そうなると、

タカムスビ+カミムスビ

タカムスビ+アマテラス


タカムスビ

と変遷したことになります。

はたしてこのような変遷がありうるでしょうか?
日本書紀が編纂された8世紀初頭では、アマテラスの皇祖神としての地位は確立されていた、あるいは少なくとも確立されつつあったと考えられています。

そうなるとその段階で、タカムスビ+アマテラスという司令神のセットから、アマテラスを削除してタカムスビのみにしたことになりますが、あえてそのようなことをするでしょうか?
なぜなら司令神がタカムスビというのは、天皇家にとって不都合な話であり、そのように変更する動機はないからです。

実際、通説でも、
”この神話はタカムスヒ系のほうが古い形態と考えられており、アマテラス系は、天照大御神の
皇祖神化という歴史的な事情を背景に、タカムスヒ系をもとにして出来た伝とされている。”(「神名データベース 正勝
吾勝々速日天之忍穗命」(国学院大学HP))

となると史実は何なのか、です。
答えは明らかに、もともとの司令神はタカムスビだったということになるのではないでしょうか?

なお当初の史実が、タカムスビ+カミムスビだったということも考えられます。
タカムスビとカミムスビは対偶神として描かれているからです。もっともそうであるなら、なぜ古事記にそのように記載されなかったのか、という疑問は残ります。

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青松光晴

Author:青松光晴
古代史研究家。理工系出身のビジネスマンとして一般企業に勤務する傍ら、古代史に関する情報を多方面から収集、独自の科学的アプローチにて、古代史の謎を解明中。特技は中国拳法。その他、現在はまっている趣味は、ハーブを栽培して料理をつくることです。

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